2014 Fiscal Year Research-status Report
素粒子実験で用いる半導体受光素子の微弱光検出能力の限界を探る
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23540338
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
吉田 拓生 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30220651)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / 半導体受光素子 / シンチレーション光 / チェレンコフ光 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、浜松ホトニクス社製のアバランシェフォトダイオード(APD)S5343mod(APDアレイSPL2367等の元になった特注品)およびS8664-55に、平均光子数30個以下の微弱な光パルスを照射し、微弱光検出能力の限界を探る実験を行った。光源には、素粒子実験で用いる3HF型シンチレータ―の発光スペクトルに合わせて、波長500~600nmのLEDを用いた。 光パルス中のパルス毎の光子数は、平均光子数の周りにポアソン分布することが分かっている。そのような光パルスをAPDに照射すると、APDの中で入射光子数に比例する数の光電子が生成され、それが電気信号となって検出される。本研究では、そのような光パルスがノイズではなく信号として識別される確率(検出効率)と、その光パルスがAPDの中で生成する平均光電子数を測定した。一般に、素粒子を検出する実験では、飛来した素粒子を、できれば100%、少なくとも97%以上の確率で検出することが望まれる。これは、本研究において、受光素子に入射する光パルスを97%以上の確率で検出する必要があることを意味する。本研究で、室温中に置かれたAPDに対して行った実験の結果、光パルスを97%以上の確率で検出するために必要な平均光電子数は、受光面の大きい(5mm×5mm)S8664-55では78個であったが、受光面が小さく(直径1mm)、従ってノイズも小さいS5343modでは33個であった。さらに、このS5343modを-40℃まで冷却し、さらなるノイズの低減を図ったところ、平均光電子数14個の光パルスで97%の検出効率が得られた。なお、このAPDで光電子を14個得るためには、入射光パルス中に光子が15個程度あればよく、同じ検出効率を達成するためには20個以上の光子を必要とする光電子増倍管などに比べて、APDの方が高感度であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
素粒子実験で用いられるプラスチックシンチレータ―などの発光を検出するための受光素子として適していると考えられる種々の半導体受光素子のうち、アバランシェフォトダイオード(APD)の微弱光検出能力の限界を決定することができた。その結果、シンチレーティングファイバー素粒子飛跡検出器などによく用いられる3HF型シンチレータ―の発光波長領域(波長500~600nm)で、光電子増倍管などよりもAPDの方が高感度であることが明らかになった。また、APDの冷却による微弱光検出能力向上の様子も、定量的に測定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、種々の半導体受光素子のうち、これまでまだ試していないマルチ・ピクセル・フォトンカウンター(MPPC)の微弱光検出能力の限界を決定する。対象とするMPPCは、既に素粒子の検出器の中などでもよく使われている浜松ホトニクス社製のS10362-11-100C、S10362-33-100Cなどである。MPPCも、冷却によってノイズが減少することが分かっているので、微弱光検出能力と温度との関係も調べる。 また、APDについても、既に-40℃程度まで冷却することによって感度が飛躍的に向上することが分かったが、今後、液体窒素などを用いてさらに低い温度まで冷却し、さらなる向上が図れるか否かを調べる。
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Research Products
(6 results)