2015 Fiscal Year Annual Research Report
素粒子実験で用いる半導体受光素子の微弱光検出能力の限界を探る
Project/Area Number |
23540338
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
吉田 拓生 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30220651)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / 半導体受光素子 / シンチレーション光 / チェレンコフ光 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、半導体受光素子の一種であるマルチピクセルフォトンカウンター(MPPC)の微弱光検出能力を評価する実験を行った。種々のMPPCの中で検出効率の最も大きい浜松ホトニクス社製のS10362-11-100C(受光面1mm×1mm、ピクセルサイズ100μm×100μm)を選択した。光源として用いたLEDの光パルス中のパルス毎の光子数は、平均光子数の周りにポアソン分布することが分かっている。そのような光パルスをMPPCに照射すると、MPPCを構成する多数のピクセルの内、光子が当たったピクセルの中で一定の確率で光電子が生成され、それが電気信号となって出力される。光子が当たった各ピクセルからの信号はMPPCの中で重ね合され、結果的に入射光子数に比例する大きさの信号として出力される。本研究では、そのような光パルスがノイズではなく信号として識別される確率(検出効率)とMPPC中の平均光電子数との関係を測定した。その結果、光パルスを97%以上の確率で検出するために必要な平均光電子数は、MPPCを室温中に置いた場合では13.4個であったが、MPPCを-40℃に冷却し、ノイズの低減を図ったところ、5.2個まで減らすことができた。平均光電子数が5.2個となるためには、入射光パルス中に光子が平均6.9個あればよく、本研究の目標である「光子10個以下」を十分満たしている。 本研究期間全体を通じて、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード(APD)、マルチピクセルフォトンカウンター(MPPC)の微弱光パルス検出能力の限界を調べた。APDやMPPCなどの半導体受光素子は、室温中ではノイズが大きいため、光電子増倍管ほどの高感度は得られなかったが、冷却するとノイズが減り、微弱光に対する感度が光電子増倍管を上回るようになった。最終的に、-40℃に冷却することによって、APDで平均光子数12.6個、MPPCで平均光子数6.9個あれば、100%近い検出効率で検出することができるようになった。
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Research Products
(5 results)