2011 Fiscal Year Research-status Report
磁場印加型エマルション検出器を用いたニュートリノ振動実験
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23540347
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
渋谷 寛 東邦大学, 理学部, 教授 (40170922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三角 尚治 日本大学, 生産工学部, 准教授 (80408947)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / エマルション / 磁場 / ニュートリノ / ECC |
Research Abstract |
長基線ニュートリノ振動実験OPERAのグランサッソ研究所でのブリックハンドリングなどの処理に貢献すると共に日本でのエマルションフィルムのスキャンと解析にも本格的に参加した。インターフェースフィルム内の飛跡探索スキャンから、標的ブリック(ECC)への飛跡逆追跡、ニュートリノ反応の再構成、崩壊探索までの全工程に貢献した。その結果、興味深い事象が複数検出されたが、タウ崩壊候補とバックグラウンド(BG)との区別が必要不可欠である。我々は主なBGの1つ、ハドロン反応の研究を行った。4GeV/cπ中間子反応から放出された2次粒子の運動学的分布はモンテカルロ・シミュレーション(MC)とほぼ矛盾がないことを確認し、論文にまとめた。さらに核破砕粒子が付随する割合を測定した。核破砕粒子はタウ崩壊から放出されることはないので観測されればハドロン反応の有力な証拠となる。その割合の入射粒子運動量依存性も観測され、タウ崩壊とBGとの識別に重要なデータを提供できた。 この中で大角度飛跡まで観測可能な独自の広視野自動飛跡読み取り装置を開発した。専用ハードウェアを用いた旧装置UTSと比べ、柔軟な対応が可能なGPUを用いた高速システムである。飛跡ランキング法を用いることで解析対象の飛跡とコンプトン電子飛跡を効率的に分離することができる。次世代の磁場印加型エマルション検出器を用いたニュートリノ振動実験には必要不可欠なシステムで、すでにUTSと同等な速度を達成できた。 磁場印加型エマルション検出器の研究では電子・陽電子の識別に焦点をあて、MCを整備するとともに以前SPring 8において低エネルギー電子を照射したECCの解析により、検討を行った。ECCに使用する金属板をより薄いものに変更することで、サブGeV程度の低エネルギー電子まで検出対象に含めることができる。薄塗り乾板の塗布テスト、構造体の設計も開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OPERA実験に貢献する中で、タウ崩壊の主なBGの一つ、ハドロン反応の研究を推進し、その成果を発表した。さらに独自の広視野高速自動飛跡読み取り装置の開発に成功し、実用化することができた。次世代の磁場印加型エマルション検出器を用いたニュートリノ振動実験にはこのような柔軟なシステムが必要不可欠であり、その実現に向けて一歩近づいたといえる。大角度飛跡の読み取りが可能になるとともに、解析の邪魔になるコンプトン電子の飛跡を効率的に分離できるので旧システムでは必要とされたマニュアル・チェックを大幅に低減できる。 並行してエマルション検出器本体の設計とテストを進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
OPERA実験の遂行と解析に貢献し、エマルション検出器を用いた実験技術の向上を図る。昨年度はタウニュートリノ検出の要であるタウ崩壊の観測に際し、その主なBGの一つ、ハドロン反応の研究が喫緊の課題となったため、ハドロンビームを照射したECCブリックの解析を優先させた。今年度はその研究をさらに発展させるとともに、開発した自動飛跡読み取り装置の改良や解析法を研究する。これらは次世代のニュートリノ振動実験に必要不可欠の要素である。 磁場印加型エマルション検出器本体の設計を進める。まず宇宙線を用いたテストを行い、固定法などの有効性を確認したうえで、電子・陽電子の識別に焦点をあてたビーム照射実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
OPERA実験のビーム照射、ブリックハンドリングなどの処理のため、現像薬品などの消耗品費とイタリア・グランサッソ研究所への出張旅費が必要になる。解析の打ち合わせのため共同研究者会議に出席し、研究成果発表のため国際会議に参加する予定で、出張旅費が必要になる。自動飛跡読み取り装置の開発・改良、運転のための消耗品として、対物レンズ、電子部品、オイル、エタノールなどを購入する。 磁場印加型エマルション検出器本体の設計に基づき、構造体、金属板、スペーサー、原子核乾板、塗布・現像・膨潤処理用薬品などの消耗品を購入する。磁場印加型エマルション検出器のビーム照射実験とそのための調査を SPring 8、J-PARC、CERN研究所、米国フェルミ研究所などで行うため、出張旅費、運搬費などが必要となる。
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Research Products
(9 results)