2013 Fiscal Year Annual Research Report
LHC ATLAS実験における新粒子探索用ミューオントリガーの開発
Project/Area Number |
23540358
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
長野 邦浩 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (90391705)
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Keywords | ATLAS / LHC / トリガー / ミューオン / 新粒子探索 |
Research Abstract |
ATLAS実験トリガー系のうち、第2段においてミューオン検出器だけを用いるトリガーアルゴリズムを新規に開発した。ソースコードはC++言語で合計約7000行になった。運動量測定の際に用いる変換関数のパラメトリゼーションを改良し、検出器の読み出しに問題があった場合でもパターン認識の条件を緩めるなどして運動量分解能と効率を上げた。2012年のLHC運転にて実際に稼働させた。導入した改良箇所は全て予定通り機能し、ATLAS実験全体のミューオントリガーの効率を高める事に成功した。 バックグラウンドを排除するためには最内層のミューオン検出器におけるヒット情報が有効であることが分かったので、ヒットパターン認識を改良した。測定された時間から位置座標への変換の際の二択の不定性を解く論理の改良などを行い、最内層で誤認識を40%も減少させた。 ミューオン検出器だけを用いる新トリガーで高くなってしまう頻度を下げるために、磁場が複雑な領域に新しく導入された検出器を用いてトリガー論理を開発した。運動量を再構成する手法を開発し、高いトリガー頻度の原因である運動量分解能をおおむね倍程度向上させた。 2012年データで新粒子探索が進むにつれ、縮退した超対称性シナリオなど、崩壊時に低い横運動量を持つミューオンを放出する新粒子の探索の重要性が増してきた。特に低い横運動量領域でミューオントリガーの性能を精密には測定できていなかったので評価用のトリガーを開発して2012年運転に導入、得られたデータを元に効率と分解能を精査して検出器境界領域や構造が複雑な場所など特定の領域での非効率などを新たに理解した。 本研究で新しく開発したミューオン検出器だけを用いるソフトウェアの枠組みに、既存のRPC検出器を用いた検出粒子の速度を測定するアルゴリズムを組み込んだ。 本研究にて3名が修士号を取得した。
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