2012 Fiscal Year Research-status Report
金属/半導体界面の原子拡散・構造安定性の理論:無機から有機への展開
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23540361
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中山 隆史 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70189075)
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Keywords | 金属/半導体界面 / 原子拡散 / 混晶化 / 化合物化 / 有機分子固体 / 巨大歪環境 / 電場環境 / 金属クラスター |
Research Abstract |
本研究の目的は、第一原理計算に基づき、金属/無機・有機半導体界面において、界面原子が拡散し混晶・化合物化するメカニズムを系統的に分類・解明し、界面構造安定性の理論を構築することである。本年度は前年の研究を拡張させ、以下の成果を得た。 1.多様な金属/半導体界面への展開 (1)約20種の金属原子侵入に関する金属/Si界面の安定性を解析し、侵入バリアは金属原子膜の凝集エネルギーや金属原子の原子半径を用いて分類・予言できることを明らかにした。本成果は今後、研究者が界面安定性を考える基盤データベースになると考えられる。(2)化合物化した金属のFeSi3/Ge界面等では、共有結合度に比例して界面種の安定性が増し、成長過程と共に界面形態を変化させる。本結果は界面形態が一意的でないことを初めて示したものである。(3)分子動力学を用い、界面の混晶化過程を追う理論手法を開発した。 2.歪環境下での界面安定性 (1)シリサイド等の界面では、歪に依存して異なる組成相や界面方位が発生する。(2)金属/有機半導体界面では、歪が有機分子を傾斜させ拡散バリアを変化させる。これら結果は最近の実験結果を説明するものである。 3.電圧印可時の界面安定性 (1)電荷中性を破った金属/半導体界面の計算を行うことで、電圧印可時の界面安定性を検討できる手法を開発した。この手法をAg/Si界面に適用し、拡散中に原子は荷電状態を徐々に変え、侵入バリアが界面からの距離と共に変動することを明らかにした。(2)ポリアセチレン等のπ電子有機分子固体内では、電気陰性度の低いAl等は正に帯電しAl原子間に斥力を生み凝集しにくいが、陰性度の大きいAu等は短距離で引力が働き凝集する。この結果は、拡散した金属原子のクラスター化を初めて解明したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に計画していた原子拡散による多様な金属/半導体界面の安定性の系統的な解明、混晶・化合物化過程の解明は、ほぼ終了した。また、巨大な歪環境下、および電圧印可環境下での計算方法も確立し、その手法を用いて新しい界面相の存在や拡散形態の変化などが見出され、最終年度に研究成果をまとめて界面安定性の理論を構築する準備が整ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、前年度に開発した電圧印可時の界面安定性の計算手法を適用して、電圧印加が界面の原子拡散に及ぼす効果を系統的に明らかにする。また、欠陥や析出層などの界面の不均一性が界面安定性をどのように変質させるか、その結果発生する構造が電子物性にどう反映されるかを議論する。これら結果、及び前2年間の結果を、原子拡散と混晶・化合物化の起源、無機と有機の本質的な相違、外場下での界面安定性の変化の3つの観点から整理し、界面安定性を支配する物理量とその仕組みを明らかにした理論(物理描像)を構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、研究成果の発表に要する旅費が予定より少額であったため、次年度使用額が約1.6万円となったが、ほぼ計画通り研究費を使用したと考えている。 最終の平成25年度の研究費は、計算結果を記録するためのハードディスク等の物品購入(約10万円を予定)、計算結果の解析や図形処理を依頼するための謝金(約17万円を予定)、研究成果を発表するための国内外旅費(約30万円を予定)、研究成果を論文公表するための費用(約5万円)に使用する。
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Research Products
(13 results)