2011 Fiscal Year Research-status Report
アト秒ストリーク光電子分光での多体論的光電子散乱の効果に対する理論研究
Project/Area Number |
23540364
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
LEE Jae Dong 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (50447695)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アト秒ストリーク光電子分光 / 光電子分光 / 光電子放出タイミング / 強相関系 / 二ハロゲン化銅 / 電子相関 / アト秒パルス |
Research Abstract |
強相関系における実施間電子輸送現象の観測を可能にする新しい時間分解電子分光法であるアト秒ストリーク光電子分光(attosecond streaking photoemission spectroscopy)の研究を理論的に行った。アト秒ストリーク光電子分光法では最先端のレーザ技術の産物であるアト秒レーザパルスを使って原子、分子、または固体から放つ光電子を実施間で追跡するのが可能になり、電子の状態による光電子としての放出タイミングがアト秒レベールで計測される。この新しいアト秒科学は、アカデミックな面では量子力学・量子光学の究極的な理解とデモンストレーションでもあるし、応用の面では光波により制御されるアト秒の時間スケールの新しい電子工学の到来を告げる。そして、光電子の放出タイミングを決定するのが何かは非常に重要な問題で光電子放出の制御の出発点になる。それで、我々は電荷移動サテライトを持つ二ハロゲン化銅(copper dihalide)のシステムでその光電子の放出タイミングへの電子相関効果の研究を行った。この研究は、光電子の放出タイミングへの電子相関効果についての最初の理論研究で、電子相関に関する新しい観点と共にまだ行ってない実験に大きな洞察力を示す。研究の結果、二ハロゲン化銅の光電子分光で、サテライトがメインピークの光電子より遅く放出されるのが分かった。特に、サテライトとメインの間の放出時間差は電子相関の大きさに決定的に関係するのが分かった。関連論文は、今、Physical Review Lettersに投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画の平成23年度の研究課題である二ハロゲン化銅の3sコアレベール光電子分光での光電子放出タイミング問題を成功的に完了した。二ハロゲン化銅の光電子分光で、サテライトがメインピークの光電子より遅く放出されるのが分かった。特に、サテライトとメインの間の放出時間差は電子相関の大きさに決定的に関係するのが分かった。研究結果は論文で作成し、関連論文はすでに国際ジャーナルに投稿中である。今は、二ハロゲン化銅の直接光電子分光の問題からより拡張され、オージェプロセスを含む新しい問題を研究し始めた。このため、現在までの研究の達成度は当初計画以上に進展しているまたは計画とおりに順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の二ハロゲン化銅の直接光電子分光の問題からより拡張され、オージェプロセスを含む新しい問題を研究し始めた。この新しい問題には二つの物理的主眼点があり、アト秒レベールでの実施間追跡という新しい観点からの深い理解を要する。まずは、電子相関が原因になるオージェ電子放出を(直接光電子分光の場合では、光が電子放出の原因になる)アト秒スケールで研究して、電子放出についての電子相関の効果をより深く理解する必要がある。もう一つは、直接光電子分光での光電子放出とオージェ電子放出の間の量子力学的な干渉をアト秒スケールで研究することで(共鳴光電子分光と呼ばれる)、光電子とオージェ電子の量子力学的なフェーズに関する問題を明らかにする必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究費中、消耗品等の納品が間に合わない関係で少額の未使用額が(23,455円)生じた。この未使用額をあわせて、次年度の研究費は国内研究者の招へい、国内旅費、論文の出版、消耗品等に使う計画である。国内研究者の招へいは、最新研究情報の交換と共同研究の打ち合わせを目的にする。国内旅費は、国内開催の学会、例えば、日本物理学会年次大会等の参加を目的にする。論文出版費は、ジャーナルからの出版料等を充てる。
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