2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540367
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 聡 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80212009)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | オージェ緩和 / 1次元モット絶縁体 / ホロンとダブロン / 光励起状態 |
Research Abstract |
オージェ過程は、多くの物質において光励起状態の緩和過程を支配する重要な物理現象である。しかし、現状では、電子相関効果が弱い(バンドギャップに比べてクーロン相互作用が弱い)極限での解釈が、その利用限界を全くかえりみることなく、比較的電子相関が強い物質においても用いられている。そこで、電子相関が強い場合にも適用可能なオージェ過程を記述する枠組みを確立し、さらにこれを用いて、オージェ過程の電子相関効果に関するクロスオーバーを研究し、異なる描像で記述されるオージェ過程を比較することにより、より一般的な視点からオージェ過程の理解を進めることが、本研究の目的である。 今年度は、強相関電子系の標準的モデル(PPPモデル)を用いて、1次元モット絶縁体を光励起した場合の時間依存シュレディンガー方程式を大規模数値計算によって厳密に解き、荷電キャリヤ数の時間変化を計算した。現実の強相関物質に適当なパラメーターを用いた場合、最大光励起密度が18%以下の弱励起の場合においては、荷電キャリヤであるホロンとダブロンの対の二組が一組に崩壊するオージェ緩和が支配的であることを明らかにした。これまのオージェ過程の理論的な記述は、クーロン相互作用項の一部を摂動項とすることによりなされ、弱相関の極限でのみ正当化される。しかし、本研究により明らかになった1次元モット絶縁体のオージェ緩和は、ホロンやダブロンのトランスファー項を摂動項とすることによって記述可能であり、従来のオージェ緩和とは全く異なるものである。さらに、実験によって観測されている1次元モット絶縁体の光励起状態の超高速緩和が、オージェ緩和によって説明できる可能性があることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究実績の概要】に記したように、1次元強相関電子系の標準的モデル(PPPモデル)における数値計算により、荷電キャリヤ数の時間変化を計算する研究に関しては、強相関領域での研究はほぼ完成したと言える。研究計画通りに、クーロン強度を変化させながら、同様な方法で計算を進めることを試みているが、この研究には以下のような難しい点がある。強相関時での研究で明らかにしたように、オージェ緩和が発生するためには、ダブロン-ホロン対が二つある状態と一つだけの状態が縮退している必要がある。有限サイズの数値計算においては、この縮退が特定のクーロンパラメーターの組でしか成立せず、オージェ緩和を研究するためには、このようなパラメーターの組を見出す必要がある。この計算に時間がかかり、クーロン強度を変化させる研究の進行が遅れている。ボゾン展開法による研究に関しては、予想したよりも数値計算に時間がかかることがわかり、見直しが必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究実績の概要】に記したように、強相関電子系の標準的モデル(PPPモデル)において、1次元モット絶縁体を光励起した場合の時間依存シュレディンガー方程式を大規模数値計算によって厳密に解き、荷電キャリヤ数の時間変化を計算し、現実の強相関物質に適当なパラメーターでは、ホロンとダブロンの対の二組が一組に崩壊するオージェ緩和が支配的であることを明らかにした。ここでのオージェ過程は、ホロンとダブロンを荷電キャリヤとする描像に基づき、電子の運動エネルギー項のうちホロン-ダブロン対数を変えない項を摂動項とし、クーロン相互作用項を含むそれ以外の項を主要部分とすることにより記述される。クーロン相互作用強度を変化させながら同様の数値計算を行う。さらに、ボゾン展開法により、強相関時のオージェ過程を記述することを試みる。これらの結果から、この新しいオージェ緩和記述の枠組みが、どの程度のクーロン強度まで妥当であるか、どのようにして崩壊するのか、もしくは従来の弱相関時の描像につながっていくのかを、検証する。ここで得られた結果から、オージェ過程を、従来の弱相関極限での描像を越えた、より広い視点から再検討する。さらに、クロスオーバー領域でのオージェ過程におけるエキシトンの増殖などの特異な現象、さらに、この現象と光誘起相転移との関連について研究する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の予算で購入した、小規模クラスタ計算システムを用いて、数値計算を進めてゆく。そのため、次年度の研究費は、主に研究結果を発表するための費用に使用する。
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Research Products
(1 results)