2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540367
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 聡 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80212009)
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Keywords | オージェ緩和 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
オージェ緩和過程は、多くの物質において光励起状態の緩和過程を支配する重要な物理現象である。しかし、現状では、電子相関効果が弱い(バンドギャップに比べてクーロン相互作用が弱い)極限での解釈が、その利用限界を全くかえりみることなく、比較的電子相関が強い物質においても用いられている。そこで、電子相関が強い場合にも適用可能なオージェ過程を記述する枠組みを確立し、さらにこれを用いて、オージェ過程の電子相関効果に関するクロスオーバーを研究し、異なる描像で記述されるオージェ過程を比較することにより、より一般的な視点からオージェ過程の理解を進めることが、本研究の目的である。 今年度は、中間および弱相関領域において、1次元電子系の標準的モデル(PPPモデル)を用いて、光励起した場合の時間依存シュレディンガー方程式を大規模数値計算によって厳密に解き、荷電キャリヤ数の時間変化を計算した。前年度までの研究から、強相関領域では、荷電キャリヤであるホロンとダブロンの対の二組が一組に崩壊するオージェ緩和が、荷電キャリヤの緩和において支配的であることが明らかになった。今年度の研究から、中間、弱相関領域においても、ホロンとダブロンの数の変化率は励起電場の4乗に比例しており、このことから、荷電キャリヤの対消滅が支配的な緩和過程であることが明らかになった。しかし、ホロン-ダブロン対を2個もつ状態の量子重みは、中間領域では、ほとんど変化せず、弱相関領域では、むしろ時間とともに増加することがわかった。これらの結果は、これらの領域での荷電キャリヤの緩和は、単純なホロン-ダブロン対のオージェ緩和過程で記述することができないことを意味している。このようにして、オージェ緩和過程の相関強度に対するクロスオーバーを見ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究で、1次元強相関電子系の標準的モデル(PPPモデル)における数値計算により、荷電キャリヤ数の時間変化を計算する研究に関しては、強相関領域での研究はほぼ完成し、ホロン-ダブロン対のオージェ緩和過程の枠組みを確立することができた。【研究実績の概要】に記したように、今年度は、研究計画通りに、クーロン強度を変化させながら、同様な方法で計算を進め、オージェ緩和過程の相関強度に対するクロスオーバーを見ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究実績の概要】に記したように、強相関物質に適当なパラメーターでは、ホロンとダブロンの対の二組が一組に崩壊するオージェ緩和が支配的であることを明らかにした。さらに、中間および弱相関領域においては、荷電キャリヤの対消滅が支配的な緩和過程であるが、これは、単純なホロン-ダブロン対のオージェ緩和過程で記述することができず、オージェ緩和過程の相関強度に対するクロスオーバーが見られことを示した。このことは、この領域での荷電キャリヤは、単純なホロンやダブロンではないことを意味している。数値計算により、ホロン、ダブロン数以外の様々な物理量(励起電子、ホール数などの)の時間変化を求め、これらを解析し、この領域での、荷電キャリヤの物理的性質を明らかにすることを試みる。これらの結果から、強相関領域でのオージェ過程(ホロンとダブロンを荷電キャリヤとする描像に基づき、電子の運動エネルギー項のうちホロン-ダブロン対数を変えない項を摂動項とし、クーロン相互作用項を含むそれ以外の項を主要部分とすることにより記述される)記述の枠組みが、どの程度のクーロン強度まで妥当であるか、どのようにして崩壊するのか、もしくは従来の弱相関時の描像につながっていくのかを、検証する。ここで得られた結果から、オージェ過程を、従来の弱相関極限での描像を越えた、より広い視点から再検討する。さらに、クロスオーバー領域でのオージェ過程におけるエキシトンの増殖などの特異な現象、さらに、この現象と光誘起相転移との関連について研究する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度の予算で購入した、小規模クラスタ計算システムを用いて、数値計算を進めてゆく。そのため、次年度の研究費は、主に研究結果を発表するための費用に使用する。
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Research Products
(1 results)