2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540370
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
星 健夫 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80272384)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 大規模電子状態計算 / オーダーN法 / 有機EL / 金属ナノワイヤ / 並列アルゴリズム |
Research Abstract |
大規模計算の基礎として、数理的研究をおこない(論文リスト1、2)、さらにモデル化(TB型)ハミルトニアンを、(1)有機EL型アモルファス状π共役高分子系poly-(9,9 dioctil flourene)(以下ポリフルオレン)、(2) 多層型ヘリカル金ナノワイヤ形成、の2つの物質を例として研究した。これらは主に、下記論文に報告されている:T. Hoshi, S. Yamamoto, T. Fujiwara, T. Sogabe, S.-L. Zhang, An order-N electronic structure theory with generalized eigenvalue equations and its application to a ten-million-atom system, J. Phys.: Condens. Matter, in press; Preprint (arXiv:1202.0098)。以下詳細を述べる:(1)ポリフルオレン系では、ASED型TBモデルで小規模分子系を計算し、第一原理計算との結果比較を行い、十分な定量的一致を得た。第一原理計算としては、Gaussian 09におけるB3LYP/6-311G(d,p)法を用いて計算した。発光特性にとって重要であるHOMO, LUMO波動関数は、ベンゼン環部分に局在しており、特徴的ノード構造をもっており、これらはモデル化計算でもよく一致している。アモルファス状構造の特徴としては、高分子鎖のツイストからくる、局在したπ電子系がHOMO, LUMO状態となった。これらは、発光特性を議論するさいの基礎となる。大規模計算としては、1000万原子系での計算が、独自オーダーN法によって達成された。(2)多層型ヘリカル金ナノワイヤ形成については、金属系での適用が可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
汎用なモデル化(TB型)ハミルトニアンの構築が最大の課題であったが、とりあげた物質群については、当初予想以上によい結果を得たため、予想以上の発展がなされたといえる。ここでのモデル化ハミルトニアンは、上記π共役高分子系についてモデル化されてものではなく、類似物質(ベンゼン・アセチレン・C60など)についてモデル化されたものである。このモデル化ハミルトニアンが第一原理計算におけるπ共役高分子系の特徴をよく再現していることは、モデル化が、すくなくとも類似物質群については汎用性(transferability)をもっていることを意味する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の成果を基礎として、汎用なモデル化(TB型)ハミルトニアンと独自オーダーN法を基礎として、大規模計算が可能であることを、応用研究を行いながら示して行く。これらは、独自計算コード「ELSES」(http://www.elses.jp)上に実装することで実現する。その際、理論の専門家でなくとも計算が可能となるには、自動最適化機能が必要であり、これにとりくんでいく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数値計算における最適化手法として、並列計算スキームの構築を行いプログラムに実装する。オーダーN型アルゴリズムとしては、独自に開発した「Multiple Arnoldi型クリロフ空間手法」を用いるが、最適な実装に取りくむ。数理的基礎は盤石であるが、現実のコンピュータに実装する場合には、ハードウェア特性(パーソナルコンピュータ・ワークステーション・スーパーコンピュータなど)にあわせて、最適性が異なるため、それぞれに適したワークフローを構築する。具体的には、メモリ階層性(キャッシュ性)・CPU core階層性(CPU内・CPU間)を陽に考えた、計算コードが必要となる。並列化手法としては、MPI/OpenMPの混合型並列計算を基礎とする。 次年度に使用する助成金が生じた状況、および、翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画について、記述する。次年度に大幅に高速化されたCPUがインテル社から登場することが明らかになり、このCPUを搭載した計算機は従来機より高価であることが予想されるがこのマシンでの性能を検証することが本研究の目的遂行のために重要であるため、次年度に使用する助成金はおもに、このマシン購入費の一部に割り当てる。
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