2012 Fiscal Year Research-status Report
乱れたトポロジカル絶縁体相にともなう量子輸送現象の研究
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23540376
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
大槻 東巳 上智大学, 理工学部, 教授 (50201976)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / ランダムネス / アンダーソン局在 / アンダーソン転移 / 量子ホール効果 / 量子スピンホール効果 |
Research Abstract |
本課題では基礎物理,応用物理双方の観点から近年着目されているトポロジカル絶縁体における輸送現象を研究する。トポロジカル絶縁体とは系の表面(2次元系の場合には端)にトポロジカルにプロテクトされた状態が現れる系である。本研究ではこの状態がランダムネスに対して安定か,特に輸送現象がランダムネスの関数としてどのように変化するかを研究する。 昨年度までは主に2次元のトポロジカル絶縁体である量子ホール系,量子スピンホール系におけアンダーソン転移を議論した。これにより,1)量子ホール転移の臨界指数が従来思われているよりも10%ほど大きいこと,また2)量子スピンホール転移における臨界指数は従来のシンプレクティッククラスに対する臨界指数と一致することを明らかにした。(これらの成果は国際会議の議事録として本年度に出版された。後述の雑誌論文の1番目と2番目がこれに当たる。) 本年度は3次元の吐露ポジ刈る絶縁体の研究を行った。Wilson-Diracハミルトニアンにランダムネスを入れ,波動関数,状態密度,コンダクタンス,Lyapunov指数がどのように変化するかを議論した。特に表面状態に対する乱れの効果を議論した。またランダムネスの強さを含んだパラメータ空間における相図を決定した。(これらの成果は投稿中である。) さらに有限サイズよるエネルギーギャップの大きさを,強いトポロジカル絶縁体,弱いトポロジカル絶縁体に対して研究した。これにより境界条件依存性,異方性パラメータ依存性を明らかにした。(雑誌論文の3番目がこれにあたる。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子ホール転移,量子スピンホール転移の解析は順調に行えた。また3次元のランダムネスのない場合のエネルギーギャップがシステムサイズに対してどのように振る舞うかという新たな研究テーマにも取り組むことが出来た。 こうした研究を受けて,3次元のトポロジカル絶縁体に対するランダムネスの効果を研究した。具体的にはWilson-Diracハミルトニアンを用いた。この研究においてランダムネスを入れた場合の3次元トポロジカル絶縁体に対する相図を決定した。この結果は速報性が必要だと判断しレター誌に投稿したが,2013年3月末の現時点で審査中で有り,出版が遅れているのが残念である。
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Strategy for Future Research Activity |
3次元のトポロジカル絶縁体のトポロジカル絶縁体に対するランダムネスの効果を引き続き研究する。これまでの研究で,相境界ではランダムネスが散乱に寄与しないことが分かった。今年度はカーネルポリノミアル法による状態密度,局所状態密度の研究を中心に行い,これまでの内容を確認する。また,これまで得た結果を拡張し,エネルギーが0でない場合,異方性がある場合などに対してコンダクタンスやその分布関数を計算する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本課題の成果をまとめたものを出版するとともに,国際会議等で最新の研究成果を発表し,また同分野,異分野の研究者との交流を行い,本研究テーマを議論する。そのため,研究費は投稿料,国外・国内旅費などに使用する予定である。
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Research Products
(6 results)