2011 Fiscal Year Research-status Report
マイクロキャビティ構造を用いたコヒーレントフォノンに関する研究
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23540377
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
島田 良子 日本女子大学, 理学部, 准教授 (90346049)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | コヒーレントフォノン / マイクロキャビティ / キャビティポラリトン |
Research Abstract |
半導体発振器の出力とその周波数の関係を見ると、テラヘラツギャップと呼ばれる2THz付近に向かって電波側、光側の両方から出力低下領域がある。コヒーレント音響フォノンの利用は、そのギャップを克服するひとつの手段として注目されている。本研究では、酸化亜鉛(ZnO) と窒化ガリウム(GaN)をベースとしたハイブリッドマイクロキャビティ構造を用いた指向性・単色性に優れたコヒーレント音響フォノンの生成と、これらコヒーレント音響フォノンとキャビティポラリトンとの相互作用について、実験的に明らかにすることを目的として研究を進めてきた。 平成23年度は、本研究に用いるZnO/GaNハイブリッドマイクロキャビティ構造の作製をVirginia Commonwealth University(米、Prof. Morkoc研究室)で実施した。マイクロキャビティ構造のうち、一方の反射鏡(Distributed Bragg Reflector:DBR)には、GaN/AlNの組み合わせ、もう一方はSiO2/SiNxの誘電体多層膜を用いた。GaN/AlNの組み合わせは、もっとも屈折率差の大きい組み合わせで、全体の総数を減らすことは可能であるが、格子定数の差も大きいため、格子不整合によるひずみの発生で欠陥を生じやすい。そこで、本研究では、DBRの作製のプロセスを見直し、数組の層の間に、超格子構造を挿入し、格子不整合によるひずみを緩和するようにした。作製した試料の基本的な光学評価(透過・反射・発光特性など)は、University of North Texas(米、Prof. Neogi研究室)で実施した。その結果、作製したマイクロキャビティの品質に若干のばらつきが見られ、今後の試料品質の改善が望まれている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の目標である、新しいZnO/GaNハイブリッドマイクロキャビティ構造の作製とその基本的な光学特性の確認を行った。また、光学特性評価の結果を、マイクロキャビティ作製へフィードバックし、新たに、GaN/AlNを用いたDBRの作製を試みることができた。格子不整合によるひずみ緩和のための工夫として、λ/4の厚さのGaN層とAlN層5.5組ごとにGaN/AlN超格子構造(5.5組)を挿入した。一部、ZnOキャビティ層とGaN/AlN DBRのストップバンドのずれが認められたため、今後さらに良質のマイクロキャビティ構造を作製する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、さらに良質(クラックフリー)のZnO/GaNハイブリッドマイクロキャビティ構造の作製を目指す。また、超短パルスレーザーを用いた光励起によるコヒーレント音響フォノンの生成実験を行う。 既存のZnO/GaNハイブリッドマイクロキャビティ構造において、コヒーレント音響フォノンの生成が確認できれば、第2段階として、生成されたフォノンとマイクロキャビティ構造中のキャビティポラリトンとの相互作用について実験的に検討する。この実験には、新たなマイクロキャビティ構造が必要となる。そこで、新規のキャビティ構造(フォトンの増幅のためのキャビティ構造とフォノンの増幅のためのキャビティ構造を重畳したもの)について設計・検討を開始する。 結晶成長に関しては、Prof. H. Morkoc(Virginia Commonwealth Univ.)、超短パルスレーザを用いた光学評価は、Prof. A. Neogi (Univ. of North Texas) と協力して行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画は、主に光学測定のための光学部品、低温実験のための液体ヘリウム、結晶成長のためのサファイア基板など消耗品と、Virginia Commonwealth UniversityとUniversity of North Texasにおける結晶成長、および光学測定のための海外旅費に充当する予定である。また、国内学会等での成果発表及び情報収集のための旅費とする。
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