2012 Fiscal Year Research-status Report
電子系とのアナロジーによるトポロジカルな光輸送現象の開拓
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23540380
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
落合 哲行 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, 主任研究員 (80399386)
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Keywords | トポロジカルフォトニック状態 / パリティ異常 / domain wall |
Research Abstract |
電子系とのアナロジーにより、光の系において、運動量空間のトポロジーに起因する新奇な輸送現象を開拓するのが、本研究の目的である。今年度は以下のことを明らかにした。 1. アクシオン電磁力学による光の散乱問題の厳密解: トポロジカル絶縁体を記述する電磁場の有効ラグラジアンには、いわゆるアクシオン項が含まれる。この項は光にとって、第2のスピン軌道相互作用になることに着目し、その光散乱への影響を理論的に調べた。その結果、単純な幾何学的形状の場合には解析的に解けること、またその解を用いて、ファラデー回転の増強、パリティを破る光散乱、双極子輻射の増強がおきることを示した。 2. 光学におけるパリティ異常: 蜂の巣格子フォトニック結晶をもちいると、ブリルアンゾーンの角で1次の分散曲線をもつフォトニックバンドが得られる。その結果、2+1 次元の Dirac Fermion がもつ「パリティ異常」が(古典)光学系で実現できることを示した。またブリルアンゾーン中心で得られる2次の分散曲線のバンドの場合でも、これに類似した現象がおきること、またそれがエッジ状態に反映することを示した。 3. Domain-wall photon とその変調: 有限質量のDirac 型スペクトルをもつ媒質を2つ、質量項の符号が異なるペアで張り合わせると、その付近で線形のスペクトルをもつ"Domain-wall fermion" が生じることが知られている。フォトニック結晶において、「質量」は構造をいじることで容易に変えることができる。そこで、様々なタイプの接合によって、 "Domain-wall photon"の性質が変調できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的のひとつである、光スピン軌道相互作用を用いた光版のトポロジカル絶縁体の実現は、他グループにより先行され、少しトーンダウンしてしまった。しかし、Domain-wall photon の変調や、Dirac型ではない場合のパリティ異常など、違う方向での進展がいくつか得られた。 その結果、大元の目標である電子系と光系のアナロジーを通じた相互理解は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度であるが、頻繁に学会などに出席、発表できる見込みがない。そのため研究交流、討論によって研究を広げるというよりは、着実にこれまでの成果を深めていくという方向にしたい。今後とりあげる課題として、以下のものがある。 1.Dirac 型ではないときのパリティ異常とそのdomain-wall photon の性質: Dirac 型の場合、domain-wall fermion の性質は簡単に求まるが、Quadratic 型の場合、domain wall の性質は簡単には求まらない。またこの問題はd波超伝導体の接合系の問題と密接に関連している。その関連を突破口にして モデル計算と第一原理計算との比較を通して、この場合でのdomain-wall photon の性質を明らかにする。 2. Graphene を舞台としたトポロジカルプラズモニック状態の実現: 近年ドープしたGraphene におけるプラズモンを用い、究極の薄さで光を制御しようという研究が盛んになっている。これまで本研究では、無限の高さをもつ2次元フォトニック結晶のフォトニックバンドを用いて、2次元電子系とのアナロジーを考えてきた。しかし、パターニングされた graphene を用いても、プラズモンによって同様のことがおこると期待できる。そこで光学領域のホール伝導度を加味し、トポロジカルなプラズモンの状態を実現し、それによるカイラルエッジ状態をひきだす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの研究成果を発表するとともに、研究へのフィードバックを得るために、おもに電子系をターゲットとした国際会議に出席する。また研究を進めるうえでネックになってきた数値計算環境を整えるため、ワークステーションやソフト、ライブラリを更新する。
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Research Products
(4 results)