2011 Fiscal Year Research-status Report
弾性的長距離相互作用がある系での新奇光誘起相転移ダイナミクス
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23540381
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
西野 正理 独立行政法人物質・材料研究機構, 理論計算科学ユニット, 主任研究員 (80391217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 精二 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10143372)
末元 徹 東京大学, 物性研究所, 教授 (50134052)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 巨視的核生成 / 核生成 / 界面ダイナミクス / 臨界現象 / 光誘起相転移 / 弾性相互作用 / 長距離相互作用 / スピンクロスオーバー |
Research Abstract |
本課題の主な目的の一つに、弾性的長距離相互作用によってもたらされる状態変化のパターン形成機構の理解がある。本年度は、弾性的長距離相互作用系における核生成現象の理解において大きな進展があった。核生成は、準安定相と安定相の間の不連続な転移で見られる普遍的な現象であり、基礎から応用の広い研究分野できわめて重要なテーマである。伝統的に、たかだかナノメートル程の微視的なスケールで起こる一連の過程だと考えられており、実際に微視的な核生成のみが知られている。そして、核生成理論においては、その表面(界面)と内部の(自由)エネルギーのバランスで決まるある特定の大きさを持つ微視的な臨界核が考慮される。しかし、今回我々は、結晶を構成する分子が大きさの異なる双安定状態を持つことで弾性ひずみが生じるスピンクロスオーバー系のモデルを解析し、弾性ひずみにより遠く離れた分子にまで分子間相互作用がおよぶ系においては、核の臨界的な大きさはある特定の値を持つのではなく、全系の大きさに相対的なものであることを明らかにした。ここでは、核生成は巨視的な過程になることができ、「巨視的核生成」という新しい概念が得られる。これは、これまでの核生成理論に新たな展開を与える発見である。また、この成果は、系の大きさを調整することで準安定状態の強さやヒステリシスループの幅を制御する(著しく変える)原理を与え、新たな物質設計に利用できる可能性がある。さらに、構造相転移などの未解明な機構にたいしても有用な知見を与えると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
弾性的長距離相互作用によってもたらされる状態変化のパターン形成機構に関する理解が一層進んだこと。弾性互作用が長距離に及ぶ場合、これまで知られている核生成の理論では理解できない現象が起こりえることが明らかになったこと。そして、「巨視的核生成」という核生成の新しい概念が得られたこと。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、弾性的長距離相互作用系での状態変化のパターン形成機構の理解を深める。そして、研究計画にしたがって、特に光照射や急冷操作で顕著に現れる格子自由度とスピン自由度のダイナミクスの相違についても調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額297,203円 は、当初予算に計上していなかった論文掲載費用(その他に分類)が生じたことで、支出計画の変更を迫られたために生じたものである。この額は、次年度の物品費(1,000,000円)に加えて、計算機関連部品および実験消耗品に使用する予定である。
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