2012 Fiscal Year Research-status Report
弾性的長距離相互作用がある系での新奇光誘起相転移ダイナミクス
Project/Area Number |
23540381
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
西野 正理 独立行政法人物質・材料研究機構, 理論計算科学ユニット, 主幹研究員 (80391217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 精二 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10143372)
末元 徹 東京大学, 物性研究所, 教授 (50134052)
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Keywords | 巨視的核生成 / 核生成 / 界面ダイナミクス / 臨界現象 / 光誘起相転移 / 弾性相互作用 / 長距離相互作用 / スピンクロスオーバー |
Research Abstract |
スピンクロスオーバー(SC)化合物は、光誘起相転移を起こす物質系であり、low spin (LS)状態とhigh spin (HS)状態の間の状態変化で生じる格子歪により生じる弾性相互作用が、協力現象に重要であることが明らかにされている。これまでの我々の研究から、この弾性相互作用は実効的な長距離相互作用の性質を持つことが分かっている。このSC現象において、特に、LSからHS相への転移の途中でしばしばみられるantiferromagnetic-likeな相への変化においては、短距離相互作用の重要性も指摘されている。この弾性相互作用に短距離相互作用が加わった場合の相転移の理解は、光誘起相転移においても重要となる。ここでは、臨界現象に注目して研究を行った。そして、短距離相互作用の効果が、ferromagnetic-likeな場合とantiferromagnetic-likeな場合で質的に異なる事を示した。ferromagnetic-likeな相転移の場合は、弾性相互作用による長距離相互作用が本質的となり、相転移は平均場的に起こり、有限の大きさのドメイン構造が現れる。 これに対して、antiferromagnetic-likeな相転移の場合、弾性相互作用による長距離相互作用は、antiferromagnetic-like秩序には本質的な寄与はせず、短距離相互作用によるマクロなドメイン構造が現れIsing的な相転移が起こる。短距離相互作用パラメータに対する相図も解析し、二種類の秩序形成における両相互作用の役割について明らかにした。これは、光誘起相転移で生じる各相に関する臨界現象およびSC転移に対する新たな知見である。その他、ドメイン成長における界面のスケーリング則に関する研究においても、この弾性相互作用系の新奇な振る舞いを見いだし、詳細な解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光誘起相転移を示す系で弾性相互作用が協力現象に重要な役割を果たす場合、僅かの短距離相互作用がferro的に作用するかantiferro的に作用するかで、臨界現象の性質が大きく異なり、ドメイン形成の様子が変化することを見いだし、その機構を系の体積変化と関連づけて理解出来たことは新たな成果である。昨年度の「巨視的核生成」の新概念に続き、弾性的長距離相互作用によってもたらされる状態変化のパターン形成機構に関する理解が一層進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、弾性的長距離相互作用系での状態変化のパターン形成機構の理解を深める。 特につい最近、スピンクロスオーバーでのドメイン成長(界面成長)の実験が報告されたこともあり、そのダイナミクスの機構を理論的に調べる。そこでは、格子自由度とスピン自由度のダイナミクスの相違が重要になってくるが、その解析手法の開発も引き続き進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度へ繰り越した分と併せて、最新の計算機を導入する予定である。計算機周辺機器の拡充(メモリ増設等)も行う。また、研究会で成果発表を行う為に研究費の一部を旅費に当てる。その他、実験消耗品等にも使用する予定である。
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