2011 Fiscal Year Research-status Report
希土類硫化物における多数の準安定磁気構造に起因する巨大物性応答とその外場制御
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23540384
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
戎 修二 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10250523)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 希土類硫化物 / 単結晶 / 磁気相転移 / 異常磁気伝導 / 磁場中比熱 / ホール係数 / ゼーベック係数 / 磁気熱量効果 |
Research Abstract |
1.新たな単結晶育成法の確立準備:ブリッジマン法による単結晶育成を試みるために、既存の縦型電気炉に坩堝昇降装置を組み込み、酸化物試料で予備実験をおこなった。2.基礎物性の精査(1)比熱測定:α-R2S3(R=Pr,Nd)の比熱を測定し、次の知見を得た。Pr系:0.36Kより低温に新たな転移が存在、TN=2.95Kの転移でのエントロピー変化が単純予想の半分程度、TN以上でSchottky異常。Nd系:TN2=0.67Kの新たな転移、Nd1,Nd2ともに基底は二重項。(2)磁場中比熱測定:α-R2S3(R=Sm,Gd,Tb,Dy)の磁場中比熱を測定し、次の知見を得た。Sm系:磁場依存性が他に比べて小さいが、TN1のピークはb軸に垂直な磁場(H⊥b)、TN2のピークはb軸に平行な磁場(H//b)でより大きく抑制される。Gd系:磁場によるTNピークの低温シフトは、H//bの場合に顕著。Tb系:磁場印加によってTN1,TN2のピークが低温シフトするが、H//bによるTN1のシフト、H⊥bによるTN2のシフトは顕著であり、4T(H⊥b)でTN2の転移は消失するように見える。Dy系:TN1,TN2のピークは、H//bによって低温シフトするのに対して、H⊥bに対しては高温シフトし、磁気熱量効果が確認された。以上の結果から、各α-R2S3のR1サイトが、高温側転移点:TN1(Gd系は転移点が一つ:TN)でb軸にほぼ平行な方向に反強磁性転移を起こす点は共通していると考察された。各R1,R2の基底はGd系:スピン八重項、Sm,Dy系:クラマース二重項、Tb系:二重項であると考えられるが、Sm2,Tb2に関しては半数しか秩序化に寄与していないように見える。(3)輸送特性:単結晶試料の大型化が未完であり、焼成条件の変更により固くすることに成功した焼結体試料を用いてホール係数測定に着手した段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単結晶試料の大型化には、まだ成功していないために輸送特性の測定は十分に進んでいない。しかし、ホール係数およびゼーベック係数の測定が行いやすい固い焼結体の焼成条件が確立しつつあり、まず焼結体で基本的な情報を得ようと実験を進めている。また磁場中比熱の測定により、数多くの新たな知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
単結晶試料の大型化のために、気相化学輸送法の条件最適化と、坩堝昇降炉を用いたブリッジマン法による単結晶育成を試みる。ホール係数を焼結体および単結晶で、ゼーベック係数を焼結体で測定し、伝導機構についての考察を進める。その他は概ね予定通りに進め、強磁場中磁化の再精査と輸送特性に対する圧力・磁場の複合外場効果の調査等を行う予定である。また24年度に関しては、希土類を複合化した硫化物の単結晶育成に注力して試行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
気相化学輸送法の条件最適化のために石英管の購入と電気炉関連部品の購入および高騰している希土類原料化合物の購入に使用する。また、研究成果の国際会議、国内学会での報告用旅費にも使用する。
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