2013 Fiscal Year Annual Research Report
希土類硫化物における多数の準安定磁気構造に起因する巨大物性応答とその外場制御
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23540384
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
戎 修二 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10250523)
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Keywords | 希土類硫化物 / 単結晶 / 磁気相転移 / 異常磁気伝導 / 磁気冷却効果 / ゼーベック係数 / 磁気相制御 / 磁化容易方向制御 |
Research Abstract |
1.単結晶育成―気相化学輸送法では、育成条件の些細な違いが複合的に働くため、大きな単結晶を再現性良く育成することは難しいが、育成可能な条件自体はほぼ確立した。Gd,Sm,Ndのセレン化物の育成に成功したフラックス法の適用も、今後検討したい。 2.基礎物性精査と機構解明―(1)α-Dy2S3において磁場をb軸に垂直に印加すると、高温側転移点TN1が顕著に高温シフトするという磁気冷却に望ましい効果が明確になった。反強磁性転移点の高温シフトは奇妙であったが、次の解釈を与えるに至った。Dy1の反強磁性秩序化に伴うフラストレーションの除去によってDy2の磁場に対する応答が容易化し、磁場印加によるDy2でのゼーマンエネルギーの利得があるためにDy1の秩序化温度が高温側にシフトする。(2) 輸送特性:α-R2S3(R=Gd,Tb,Dy)のゼーベック係数Sの符号に関して完全なる再現性の確認を得るに至らず、今後の継続研究が必要である。Sの絶対値に関しては、焼結体より単結晶の方が二桁ほど大きいことが明らかになった。(3)数種の複合希土類硫化物単結晶の育成に成功し、磁性と伝導の基礎物性を明らかにした。 3.巨大物性応答制御―18Tの強磁場中冷却により発現したα-Dy2S3における巨大磁気ヒステリシス(GMH)の、7T磁場下での再現を試行した。低温側転移点TN2直下の6Kにおいて、7T磁場中で試料をac面内で回転させることにより、GMH発現時と同じ磁気相の再現に成功した。また2Kにおける7T磁場中試料回転により、磁化容易方向のみならず磁化曲線の特徴をa/c方向間で逆転させることにも成功した。これは磁場の大きさと方向、温度で相図が一義的に決まらず、磁場印加プロセスを変えることによって新たな磁気相を発現させることがα-Dy2S3単結晶において可能であり、磁気相の制御を介した物性制御の可能性が示唆された。
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