2011 Fiscal Year Research-status Report
クーロンブロッケード温度計を用いた強磁場中における高精度断熱法比熱測定の開発
Project/Area Number |
23540392
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
稲垣 祐次 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10335458)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河江 達也 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30253503)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 国際情報交流 / 強磁場 / 比熱 / 断熱法 |
Research Abstract |
本研究では、原理的に磁場依存性を示さないクーロンブロッケード温度計に着目し、比熱測定として理想的な断熱法を採用することで、超強磁場領域まで高精度に測定可能な比熱測定装置・技術の開発を目指している。初年度はクーロンブロッケード温度計の比熱測定へ向けた最適化に集中した。クーロンブロッケード温度計とはトンネルジャンクションにおけるIV特性がクーロンブロッケード効果の為に温度依存性を示すことを利用した1次温度計であり、具体的には微分コンダクタンスの半値幅が温度にのみ依存し、その他の外部パラメータには依存しないことを利用する。そのクーロンブロッケード温度計を比熱測定で使用する際に問題となるのがサンプリングレートである。断熱法とはいえ、実際の測定環境で実現されるのは擬断熱条件であり、ヒートパルスで昇温後の試料部の温度は熱浴への緩和の為に時々刻々と変化していく。したがって悠長に微分コンダクタンスを測定している時間的余裕はなく、1点1秒程度のサンプリングレートが要求される。そこで我々は微分コンダクタンスカーブではなく、ゼロバイアスにおけるコンダクタンス値の温度依存性に着目した。更にロックインアンプを用いることで、測定精度を保持しつつ高速サンプリング化を目指し、まずは既存の希釈冷凍機(最低温100mK)と8T超伝導マグネットを用いてテスト&改良を繰り返し行ってきた。現段階ではほぼ目標通りの性能を達成でき、標準試料を用いた断熱法比熱測定の自動測定化に向けたプログラミングに入っている。ただし、信号強度が小さくなる高温領域ではS/Nが悪化した為、徹底的なノイズ対策が次年度以降の課題である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、初年度ではクーロンブロッケード温度計の比熱測定に向けた最適化をほぼ達成することができた。ここまでを如何にクリアーするかが本研究の最大のポイントであったが、この部分に関しては予想以上に短期間に達成できた。マイナス要因としては、計画時に比べてセンサー価格が高騰していたことなどから、購入時期が若干遅れたことである。その後の開発作業で遅れを取り戻すことが出来たが、本来なら研究計画以上に伸展していたはずである。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度では、初年度で課題となったノイズ対策を実践しつつ、冷凍機の作製に移る。研究分担者である河江達也准教授は超低温の専門家であり、過去に希釈冷凍機を何台も自作してきた豊富な経験と実績があり、密に連携して半年を目処に完成を目指す。後半では初年度に作製したクーロンブロッケード温度計を実装したプローブ部分と組み合わせて最大13Tまでの強磁場領域における断熱法比熱測定のテスト、物性測定投入を目指す。更に研究の進展状況次第では国内外の強磁場施設を利用した開発も視野に入れて計画している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度で課題となったノイズ対策を施す為、低ノイズ電圧アンプの購入を計画している。更には冷凍機作製用に金属材料、真空関連部品や電子パーツ等の購入、加えて金属加工費等に研究費を使用させていただく。また、成果公表の為の国際会議参加、国内外強磁場施設における研究打ち合わせ等の為の旅費として使用させていただく計画である。
|