2014 Fiscal Year Research-status Report
磁性体中のスピンの量子ネマティック状態における普遍的特性とダイナミクスの解明
Project/Area Number |
23540397
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
桃井 勉 独立行政法人理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 専任研究員 (80292499)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 磁性 / フラストレートした磁性体 / ネマティック相 / パイロクロア格子 / トポロジカル相 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.パイロクロア反強磁性体であるスピネル型クロム化合物MCr2O4(M=Zn, Cd, Hg)における高磁場領域の実験で観測されている新奇な相を解明するために、パイロクロア格子上の反強磁性スピン模型の磁場中の磁気相図を調べた。特に、スピンと格子揺らぎの相互作用を考慮した有効相互作用(双2次型スピン相互作用)がある場合にスピンの量子効果を考慮して調べた。スピンのサイズがS=3/2の場合、及びS=1の場合の磁場中相図を作成し、スピンのサイズ依存性を議論した。クロム化合物に対応するスピンS=3/2のモデルでは、飽和磁場近傍のみに、スピンネマティック相が出現することを示した。この結果は、クロム化合物の実験で観測されている新規相の出現領域と良く合うことから、この新規相がスピンネマティック相であることが期待される。一方、S=1の場合には、双2次型相互作用が強い場合、全磁場領域に広くスピンネマティック相が出現する。 2.一次元量子スピン系において知られているハルデン相を拡張し、SU(3)対称性をもつ一次元系にあらわれるZ3トポロジカル相について解析を行った。群コホモロジーによるトポロジカル相の一般論を応用し、Z3トポロジカル相を実現するSU(3)スピンのハミルトニアンを導出した。我々はより一般のSU(3)スピンハミルトニアンをDMRGにより解析し、その相図とトポロジカル相転移点への理解を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パイロクロア磁性体における新奇な高磁場相の理論的な理解が進み、この相がスピンネマティック相であることを提唱することができた。理論と実験の間の相互の良いフィードバックによりネマティック相出現状況の理解が進んだ。この問題は論文を完成するのにやや手間取っているが、着実に完成に向けて、研究が進んでおり、来年度には論文が仕上がるめどが立ってきたので、ほぼ順調と言える。 また、一方で、symmetry protected topological 相の研究ができたことは、新規な量子相の研究の幅が広がり良かった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでおり、最終年度は論文にまとめ、国際会議で発表を行う。
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Causes of Carryover |
最終年度に、新たに当プロジェクトの理論と密接に関連した実験結果が実験グループより出された。今年度、その実験結果を説明するための理論研究を進めてきたが、論文作成が年度内に間に合わず、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文発表および国際会議での発表を次年度に行うこととして、未使用額はその経費とする。
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