2015 Fiscal Year Annual Research Report
磁性体中のスピンの量子ネマティック状態における普遍的特性とダイナミクスの解明
Project/Area Number |
23540397
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
桃井 勉 国立研究開発法人理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 専任研究員 (80292499)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
Keywords | 磁性 / フラストレート磁性体 / スピンネマティック相 / スピン液体 / スピン渦結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)フラストレート磁性体volborthite Cu3V2O7(OH)2(H2O)2を、単結晶の結晶構造を用い第1原理計算を行い、スピン相互作用を評価した。その結果、3つの隣接するスピンが強く相互作用しトライマーを作る磁性体になっていることが分かった。このモデルからスタートして、低温におけるスピン有効模型を導出した。このスピン模型は、磁化1/3に広い磁化プラトーを持ち、実験で観測されている1/3磁化プラトーを良く再現する。磁化1/3以下の領域は、空間異方性を持つ正方格子上のJ1-J2-J2’模型で記述されることが分かった。この模型は、磁化1/3の磁場直下においてマグノン対の凝縮によるスピンネマティック相を持つ。実験で磁化1/3の直下に新奇な相が観測されており、この相がネマティック相であると予想した。 2)強磁性相互作用を持つフラストレートした磁性体に現れる新奇な磁性相を調べた。古典モンテカルロシミュレーションとスピン波展開を用い、磁場中の磁性相を調べた。その結果、フラストレート反強磁体の場合とは異なる多くの新しい振る舞いを見出した。まず、ある特定の相互作用パラメターでは、磁場中の有限温度相図が、1/3プラトー相も含め三角格子反強磁性体の磁場中相図とほぼ同じになることを示した。次に、相互作用パラメターをこの点から、古典基底状態が運動量空間の曲線上に縮退し存在するパラメター点に移動すると、相図に二つの新しい相が出現することが分かった。一つは、有限温度におけるスピン液体になっており、スピン構造因子S(q)にリング構造が現れる状態である。もう一つは、渦結晶を持つ多重Q状態になっている。これらの振る舞いをエントロピー効果から議論した。
|