2012 Fiscal Year Research-status Report
CeCoIn5におけるFFLO超伝導と特異な磁気秩序に関する研究
Project/Area Number |
23540398
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
熊谷 健一 北海道大学, -, 名誉教授 (70029560)
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Keywords | 強相関電子 / 超伝導 / 核磁気共鳴 / 磁気秩序 / CeCoIn5 |
Research Abstract |
重い電子系超伝導体CeCoIn5は、超伝導転移が1次相転移であり、さらには、この常伝導-超伝導転移に加え強磁場・極低温領域で新たな超伝導相が出現する。この新奇超伝導相はPauli limitを超える強磁場中において現れるFFLO状態であることが期待された。また、多くの実験結果はCeCoIn5が量子臨界点近傍に位置することを示しており、実際超伝導相内でのみ特異な磁気的性質が現れる。我々はCeCoIn5の低温・強磁場領域での新たな超伝導相においてab面内およびc軸に磁場を加えてInサイトでのNMRスペクトルの磁場および温度依存性を詳細に測定した。これまで明らかにしたことは、 1. Pauli limitを超える強磁場で下での超伝導状態での局所スピン帯磁率温度依存・磁場依存性を明らかにした。特に、a)一次相転移での局所スピン帯磁率の不連続変化をナイトシフトの変化として観測したのは最初の例であり、b) 新奇超伝導状態でのスピン帯磁率の抑制の磁場依存性の解析より、ノード構造を伴うFFLO相であると結論した。 2. H//a-軸の磁場印加でIn(2)サイトにおいて内部磁場を受けた特徴あるNMRスペクトルが観測され、空間一様な非整合磁気秩序の出現を明らかした。 3.ab面内から印可磁場の角度を変化させるとθ=20°付近で磁気秩序とFFLO相が消失することを明らかにした。加えて、θ=0では一様な磁気秩序が出現するが、θ=7~10ではFFLO相のノード領域でのみ現れ、超伝導ギャップ≠0の領域では消失する。また、高磁場領域では磁気気秩序が消失しpureFFLO状態の新しい相が高磁場領域で現れることが実験的に示された。 これらの実験的知見を最近の理論で解析し、CeCoIn5の新奇超伝導相内でのみで出現する特異な磁気状態とFFLO相の共存の詳細を明らかにしたことは今後の研究に重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究費でNMR測定分光系および極低温生成の基本的な測定系の整備がなされてきた。今年度は低温NMRの自動測定系の整備が順調に稼働出来たことと、角度依存性の測定系が準備でき、磁気秩序と超伝導に関する磁場依存性と角度依存性の詳細なNMR知見を得ることが出来た。世界に先駆けて新しい知見を得て、最近の理論による解析が進み、FFLO相と磁気秩序の共存に関する理解を進めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
1.単結晶試料のab面と印可磁場との角度依存性の測定を継続して行い、磁気秩序の消失とFFLO相と関連を明らかにして、H-T-θ(角度)の相図の詳細な知見を得る。 2.角度に依存して変化する磁気秩序の構造をNMRの知見より明らかにし、その変化の起源を解明する。 3.内外でなされる理論的発展を踏まえて実験結果の解析を進めるため、主要な国際会議で成果発表をおこなう。併せて多くの研究者と研究討議を重ね、磁気状態とFFLO相の共存に関する研究発展を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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Research Products
(3 results)