2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540405
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
佐野 和博 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40201537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 浩次 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70281847)
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Keywords | 第一原理計算 / ダイヤモンド表面 / 超伝導 |
Research Abstract |
昨年度に引き続きダイヤモンドに外部電場を印加することにより誘起されるキャリアに関する理論的研究を第一原理計算により検討した。ここでは、モデルとしてダイヤモンドの(110)表面に注目し、清浄表面では表面C原子のダングリングボンドにより金属状態となることから水素終端した(110)表面構造を採用している。このモデルにより清浄表面でバンドギャップに現れていた表面準位が水素終端により消失し、電場誘起超伝導を再現するための理想界面を得ることができた。なお計算には、界面をシミュレーションするために十分な厚さであるのに13原子層のスラブモデルを用いて、それに外部電場を導入し表面の電子構造を求めている。 第一原理計算の結果、外部電場印加により表面層に起因する価電子帯バンドが電子に占有され、外部電場の大きさに応じてフェルミレベルの電子状態密度(キャリア密度)が増加する傾向を確認した。得られたキャリア密度を、ホウ素をドープしたバルクのダイヤモンド超伝導体の実験結果と照らし合わせてみると、期待される超伝導発現温度は絶対温度で2K程度となり十分実験的に測定可能な範囲になることが見出された。このバルクのダイヤモンド超伝導の発現メカニズムはダイヤモンド格子の格子振動(フォノン)による電子間引力が想定されているが、第一原理計算により界面におけるフォノンと電子の結合定数の評価も行ったところ、界面上でもバルクと同程度の電子間引力が期待されることも見出した。これらの結果は現在論文としてまとめ投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電場誘起超伝導のメカニズムを理解する上で理想的な表面系としてダイヤモンド表面(110面)を提案し、本年度の研究においてダイヤモンド表面に誘起されるキャリア密度を第一原理計算により具体的に求めることができた。またバルクのダイヤモンド超伝導体と比較検討することにより、ダイヤモンド表面で期待される超伝導発現温度も推定することが出来た。現在これらの成果は物理学会で研究発表を行い、また論文としてまとめ投稿する段階に至っており、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの計算結果を踏まえ、本研究で提案したダイヤモンド表面における超伝導の発現メカニズムの検討を進めていく。具体的には、ダイヤモンド表面における格子振動(フォノン)と電子の間の結合定数を第一原理計算により求め、その結果に基づき定量的にダイヤモンド表面で期待される超伝導発現温度を理論的に求める。また、バルクのダイヤモンド超伝導体との比較検討なども行い、ダイヤモンド表面における超伝導の特徴などを明らかにしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
電場誘起超伝導が理論的に可能かどうかを判断するために表面における電荷分布や状態密度、さらにキャリアとフォノンとの結合定数を第一原理計算により求める予定である。そのためには計算プログラムの改良や計算の実行などで長時間の作業が必要となるため、計算機環境の整備を引き続き進める必要がある。また得られた研究成果を発表するための旅費も必要で、これらに研究費を使用する予定である。
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