2012 Fiscal Year Research-status Report
密度汎関数変分法による遷移金属酸化物の電子状態計算
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23540408
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
草部 浩一 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (10262164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 勲 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (20422339)
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Keywords | 密度汎関数法 / 遷移金属酸化物 / 電子状態計算 / 強相関電子系 / 変分法 / 銅酸化物高温超伝導体 |
Research Abstract |
密度汎関数変分法(DFVT)における計算収束判定基準を満たす有効多電子模型を構築した。収束電子状態計算を与えるための模型更新方法であるアップコンバージョン過程は、超過程を自然に評価する電子状態計算法を与えるが、超過程は超交換相互作用、超ペアホッピング過程、ファンデルワールス相互作用を含むことを導いた。さらに、行列積状態や密度行列繰り込み群法を活用した計算理論の構築を進めた。多層銅酸化物超伝導体におけるスピン揺らぎ機構を活用した物質設計をDFVTで行うため、候補物質を絞り込むフェルミ面形状制御パラメータを用いた設計法を開発した。適切な出発物質であるTl1223系を選択して、元素置換を行って電子状態の評価を行った。その結果、BaとCaをそれぞれYとアルカリ金属に置換した系が優れた候補になり得ることを見出した。各種α相MNX系物質(KxMNCl (M=Ti,Zr.Hf),pyridine-TiNCl)における超ペアホッピング過程を比較して、層状超伝導体に特有の強相関効果が見込まれることを示した。アルカリ金属ドープしたピセンの超伝導に関して、K2piceneを半導体母物質としてKのさらなるドープを行うと、広範囲なドープ量で金属状態が発生することを見出した。AB積層Kxpiceneに特有の狭い縮退バンド形成とその強相関効果を検討した。実験グループとの連携により適切な水素化グラフェン構造を作成・解析して、欠陥形成したグラフェン構造に特有の強相関効果である局在電子状態、局在スピン発生を確定した。電子間斥力散乱起源の超過程を評価するため、DFVT計算に基づく物質中の2体電子散乱振幅の計算プログラムを作成した。これらの研究実施によって、多配置参照密度汎関数法の計算技術公開を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、遷移金属酸化物において現れる強相関電子系に対して密度汎関数変分法の適用を進めるものである。今年度は全く新しい層状銅酸化物高温超伝導体を理論設計することに成功した。初期の報告を8th Handai Nanoscience Nanotechnology International Symposium (2012, Osaka)で発表し、担当者がYoung Research Best Poster Award (若手優秀ポスター賞)を得ている。本研究が進める密度汎関数変分法は、多様な高温超伝導物質、軌道・磁気秩序、モット絶縁性物質に一般的に生じる強相関性の解析を可能とすることが分かってきたことから、共同研究範囲を東京工業大学グループや電気通信大学グループに広げ、実験の直接解析や実験家への提案を実施する研究成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には遷移金属酸化物に現れる高温超伝導体の物質設計を進めたが、得られた候補物質系の各種の物性値の具体的評価を進めることで、精度の高い物性値評価方法を与えていく。そのために、グリーン関数法、各種繰り込み群法の整備を、厳密対角化法、関数解析などの厳密評価法と併せてさらに整備していく。 また、2体散乱過程評価プログラムの整備を進めてスペクトル解析を行う計算方法を整備する。それを、強相関電子系の磁性を定める超交換相互作用の直接評価法と組み合わせて適用し、マンガン系酸化物の電荷・スピン・軌道秩序の解析に適用していく。 このDFVTによる有効多体計算に対してもう一つの標準系を与えると考えられるのがグラフェンとその欠陥構造に生じるギャップ中局在スピン系である。この制御可能なディラック電子系と局在スピンの共存系を、動的平均場近似法を自己無撞着計算化したDFVT計算によって解析し、さらに鉄系物質などへもこの方法の応用を進める。 これらを総合して、有効1次元ボゾン模型の構築と水銀系銅酸化物高温超伝導体の解析、モット・アンダーソン転移と電子相ナノ相分離から生じる機能性固体触媒設計をさらに進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題は、密度汎関数法の従来法として安定した結果を与えるGGA計算等に基づき、電子系の量子力学的揺らぎの効果を取り込んだ変分計算を実施できる、密度汎関数変分法に基づいた電子状態計算を行うものである。特に、各種層状超伝導体、遷移金属酸化物や化合物、ナノスケールで複合化された遷移金属化合物を数値シミュレーションによって取り扱うものである。そこで、研究費の使用計画においては、数値計算実施と、その成果を公開する研究費の使用が中心となる。 1)大型計算機システムの利用:昨年度に導入した計算機システムは、新規開発のプログラムについて動作検証していくために必須のものである。一方、大規模数値シミュレーションを、九州大学情報基盤研究開発センター研究用計算機システムに特有の計算機コード利用による高速構造決定と、東京大学物性研究所計算機システムの利用による大規模並列計算を実施することで進める。前者の九大センターの利用には、使用料発生があるため、研究代表者、研究分担者と研究協力者である大学院生による利用に173千円が必要である。 2)研究成果を、米国物理学会や日本物理学会欧文誌等を通して発表するための出版費用が必要となる。また、層間化合物国際会議や強相関電子系国際会議、日本物理学会、応用物理学会での研究発表を通して公開するため、旅費、会議参加費を必要とする。
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Research Products
(32 results)