2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540414
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
楠瀬 博明 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (00292201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 正茂 静岡大学, 理学部, 教授 (20281058)
古賀 幹人 静岡大学, 教育学部, 准教授 (40324321)
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Keywords | 奇周波数超伝導 / 偶奇振動数ペア混合状態 / 自由エネルギー汎関数 |
Research Abstract |
奇周波数超伝導では,相互作用の遅延効果が重要な役割を果たすため,相互作用だけでなく準粒子の自己エネルギー効果を明らかにすることが重要である.そこで,前年度に構築した奇周波数超伝導に対する内部矛盾のない理論形式を用いて,自己エネルギーの効果について明らかにした.特に,局所的な電子格子相互作用系および磁気量子臨界点近傍の特異な臨界スピン揺らぎを媒介とする引力モデルについて自己エネルギーの効果を調べ,正常自己エネルギーによる質量増強が引力の繰り込み効果を上回って奇周波数超伝導の転移温度を押し下げること,後者の相互作用では自己エネルギー効果を考慮しても転移温度が有限に留まることを明らかにした. 一方,奇周波数超伝導の一般理論を構築する過程で,偶周波数と奇周波数の混合した超伝導状態の重要性が明らかになった.バルクの混合状態を実現する最も簡単な要素は,外部磁場によるゼーマン効果を考慮することである.そこで,局所電子格子相互作用系に外部磁場を導入し,偶奇周波数混合状態の相図,比熱,超流動密度の温度依存性を明らかにした.また,スピン部分と軌道部分に起因する偶奇周波数混合状態の一般論,自由エネルギーの安定性について詳細に議論した.その結果,混合状態において偶周波数ペアが主要素である場合は,従来の超伝導理論形式が適用できるが,奇周波数ペアが主要素である場合は,ギャップ関数の粒子ホール共役関係の符号が逆転した理論形式を用いる必要があることを明らかにした. その他,接合系や界面における奇周波数超伝導の性質について議論し,奇周波数成分の出現起源を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自由エネルギー汎関数に基づく奇周波数超伝導の定式化に基づき,臨界性の違いに着目した局所電子格子系と臨界スピン揺らぎによる奇周波数超伝導における自己エネルギー効果を明らかにする点も十分に達成された. 外磁場の印可による偶奇周波数混合超伝導状態について,比熱や超流動密度などの議論や自由エネルギーの安定性の検討など順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の重要課題として不純物効果,s波以外の空間的異方性の影響などについて詳細な研究が必要である.また,空間反転対称性の破れと奇周波数との関連についても検討していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
松山と静岡に研究メンバー3名が集まり,不純物効果,空間異方性,空間反転対称性の破れとの関係などについて詳細な議論を行う.また関係する内外の研究集会において発表と情報収集を行う.これらを遂行するために次年度研究費は主に旅費に使用する.
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Research Products
(8 results)