2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540416
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
小久保 伸人 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (80372340)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡安 悟 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 主任研究員 (50354824)
|
Keywords | 微小超伝導体 / 磁束量子渦 / 走査SQUID顕微鏡 / アモルファス超伝導膜 / メゾスコピック性 / 閉殻構造 |
Research Abstract |
平成24年度では、平成23年度に行なった準備研究およびテストを踏まえ、当初の計画どおり、アモルファスMoGe超伝導薄膜を正方形状の微小超伝導体に微細加工し、得られた試料の評価として、超伝導量子干渉計を用いた走査SQUID磁気顕微鏡による量子渦配列の直接観測実験を行った。印加する磁場の大きさで量子渦の数を調整しながら微小超伝導体に現れる量子渦の数を調べた結果、一辺80ミクロンの比較的大きな正方形状試料において、量子渦数が印加磁場に対して階段状に増加する微小超伝導体に特有な性質(メゾスコピック性)を見出すことができた。これは微小超伝導体の研究が1ミクロン以下のサイズでしか行えないというこれまでの常識を覆す研究成果であった。さらにこれまで微小円板試料で見出してきた「シェル」と呼ばれる量子渦配列の閉殻構造を正方形状という異なる幾何学的境界条件下で詳しく調べた。円板のシェル構造はリング状に並ぶ量子渦の配列が同心円状に配置することによって形成され、最外殻のリングを形成する量子渦数が5、11となったときに閉殻となったが、正方形では4の整数倍(4、8、12)の量子渦数で安定した四角状の量子渦配列が現れ、そのうち4、12の量子渦数の四角形配列が最外殻を形成したときに閉殻することが分かった。このような形状に依存した閉殻構造を可視化した実験例は我々の知る限りこれまで報告されていない。本研究で得られたもう一つの研究成果となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題研究は平成23年から25年までの3カ年の期間で、微小超伝導体に閉じ込めた量子渦状態を実験的に可視化する研究を実施している。平成24年度は、初年度に行なった準備研究およびテストを踏まえ、当初の研究計画に従って、高周波スパッタ装置を用いたアモルファスMoGe超伝導膜の成膜を行い、正方形状の小さなドットに微細加工した。試料評価を行う走査SQUID磁気顕微鏡装置については、東北太平洋沖地震での被災により装置内の配線ショートや装置チャンバー内のガスリークなど多くの不具合が生じていたが、応急的な修理の結果、一部の不具合を除いて本研究に必要最低限な機能を使用できるところまで回復した。試験的に正方形状の微小超伝導体を用いて量子渦の可視化実験を実施したところ、当初の予定通り渦配列の可視化に成功し、正方形特有の渦配列の成長過程を見出すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度(最終年度)は、これまで実験的に可視化された例がない反渦を伴う量子渦状態を探索する実験を行う。その試みのひとつとして、微小な穴(アンチドット)のある微小伝導体の実験を行っていく。渦配列をアンチドットで固定し、反渦の発生を幾何学的に促すためである。ベルギーの理論グループの計算機シミュレーションの結果と比較できるように正方形状の微小超伝導体に小さな穴を設け、量子渦数が4から3へ減少する転移磁場範囲を中心に実験を行ってゆく。また当初の研究計画に従い、三角形状の微小超伝導体の作製と走査SQUID磁気顕微鏡実験も同時に行い、三角形状に特有な渦配列も詳細に可視化し、その成長過程を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は最終年度である。研究費の多くは走査SQUID磁気顕微鏡実験の実施に必要な液体ヘリウムの購入費用に充て、残額は試料成膜に必要なMo・Geのスパッタターゲット材料、基板(Siウェハ)、そして微細加工に必要なフォトマスク・レジストなど消耗品の購入費に充てる。
|
Research Products
(4 results)