2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540428
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
河野 昌仙 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (40370308)
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Keywords | モット転移 / 高温超伝導体 / 擬ギャップ / 電子ドープ / ホールドープ / クラスター摂動理論 / スペクトル強度分布 / 次近接ホッピング |
Research Abstract |
高温超伝導体の性質を定量的に説明するために、次近接ホッピングを導入した正方格子ハバードモデルの1電子励起に関する理論的解析を行った。これにより、ホールドープ系および電子ドープ系の高温超伝導体で観測されている様々な振る舞いを2次元系のモット転移近傍の性質として統一的に説明することに成功した。具体的には、ホールドープ系と電子ドープ系における擬ギャップの開く波数の違いを、次近接ホッピングによるスペクトル強度分布の変化によって説明した。まず、次近接ホッピングを摂動と考えた理論を構築し、スペクトル強度分布の定性的な特徴を捉え、クラスター摂動理論を用いて定量的にスペクトル強度分布を解析した。これにより、ホールドープ系および電子ドープ系の高温超伝導体で観測されている様々な振る舞いを統一的かつほぼ正確に再現することに成功した。ホールドープ系と電子ドープ系の擬ギャップの違いは、波数(π,0)付近の大きなスペクトル強度をもつモードとモット転移に向けてスペクトル強度を失うモードが化学ポテンシャル付近の性質に与える影響が、ホールドープ系と電子ドープ系では次近接ホッピングのために異なるためであることを明らかにした。これまで電子ドープ系の擬ギャップは反強磁性秩序の形成によるものと考えられてきたが、今回明らかにした描像では、擬ギャップの形成には反強磁性秩序は必要なく、次近接ホッピングのある2次元系のモット転移近傍の性質として自然に理解でき、ホールドープ系および電子ドープ系の性質を統一的かつ直感的に説明することができる。この研究結果は、第68回日本物理学会年次大会において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度中に平成24年度の計画まで完了したので、平成25年度に行う予定であった研究の一部を平成24年度に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、これまで得られた結果を発展させて、高温超伝導体のより現実的なモデルに対して研究を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
クラスター計算機を購入する。
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