2013 Fiscal Year Research-status Report
超高圧力下の磁性ー伝導同時測定法の開発と強相関4f電子系の相臨界領域の探索
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23540431
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
長壁 豊隆 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (80354900)
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Keywords | 高圧力 / 中性子回折 / 電気抵抗 / 磁性 / 伝導 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
本研究では、強相関4f電子系化合物において、スピンや軌道などの自由度が競合する臨界領域を低温高圧力下で生成し、この領域で発現が期待される新奇物性を、中性子回折と電気抵抗の同時測定法により磁性と伝導の視点から研究する。この目的のため、まず、10GPa級の超高圧力下および低温下において単結晶中性子磁気回折と電気抵抗を同時に精密に測定するための技術の開発を行うことが大きな目標となる。今年度は、昨年度に引き続き、中性子回折用ハイブリッドアンビル式高圧力セル(HAC)を用いて電気抵抗測定を可能にする技術開発、特に、ハイブリッドアンビル(HA)で使用するJIS2017のアルミ合金ガスケットと信号を取り出すリード線との間の絶縁技術の開発を集中的に行った。ガスケット表面に陽極酸化皮膜 (アルマイト皮膜)を形成し、それを絶縁層として機能させるという前例のない方法を考案したが、硬質アルマイト処理で形成できる皮膜厚さは高々6~8μmであり、加圧により容易に皮膜が破れてショートすることが判った。これは JIS2017アルミ合金中のCuが皮膜形成を妨げる事による。本年度、研究の過程で、アルマイト処理の電解液に特殊樹脂を添加する事で難アルマイト材にも100μmにも達する厚い皮膜の形成が可能な新しい陽極酸化処理法 (ミタニライト)があることを知り、上記ガスケットに適用した。JRR-3で常用しているキュレット直径2.7mmのHAを用いて行ったミタニライト皮膜付きガスケットの加圧試験の結果、絶縁を保ったままリード線も断線せず、また、圧力発生効率も下がらずに、現時点で、5.5GPaの圧力発生に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、研究用原子炉JRR-3に設置された中性子回折装置を使用する計画となっている。平成23年3月11日に発生した東日本大震災によるJRR-3に対する直接的、及び間接的な影響が予想より長期間に及んでおり、平成25年度中もJRR-3の稼働がなかった。そのため、 研究の目的に記載した中性子回折と電気抵抗の同時測定の実現が現時点では困難な状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
技術開発を継続して行い、上記のミタニライト皮膜法を用いて加圧下でも長時間安定して絶縁状態が維持できる様、加圧条件の最適化を行う。絶縁方法を確立できた後、充填スクッテルダイト化合物PrFe4P12及び少数キャリアー物質CeSbについて、低温高圧力下での電気抵抗測定を試みる。こららの物質については、震災によりJRR-3が停止する前にHACを用いて相境界や未知の秩序相の存在を明らにしており、同時測定ではないが、同じ高圧試料環境下での実験が可能である。PrFe4P12については、常圧非磁性状態から臨界圧力2.4GPa以上で反強磁性相が現れるが、この相転移と伝導との相関を詳細に観測する。また、この反強磁性相は臨界圧力以上で極めて安定化されるが、この現象と伝導との関係を調べる。一方、CeSbについては、過去の研究で高圧力下での巨大電気抵抗現象が報告されており、また、報告者等のHACを用いたJRR-3での実験で、5GPa付近で強磁性相と考えられる未知の相を発見している。この相と電気抵抗との関係を明らかにする。現時点ではJRR-3の中性子回折装置を使用して同時測定を行うことを念頭に準備を進めているが、JRR-3が再稼働しない事態に備えてJ-PARCの微小単結晶中性子回折装置SENJUを使用した研究を検討しており、現在、SENJUに最適化したHACとして、試料容積を拡大するための大きなキュレット面のアンビルやバックグラウンドを大幅に低減するためのBNマスクの製作を進めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、研究用原子炉JRR-3に設置された中性子回折装置を使用する計画となっているが、東日本大震災の影響でJRR-3の再稼働が見込めず中性子回折実験ができなかった。また、中性子回折用アンビル式高圧力セルを用いた電気抵抗測定のための技術開発(ガスケット絶縁技術)が困難であり、現時点である程度の見通しが付いたが、開発の進展に遅れが出ている。以上の理由により次年度使用額が発生した。 アンビル式高圧力セルを用いた中性子回折実験や電気抵抗測定技術開発を継続するために必要な消耗品である単結晶アンビル、絶縁皮膜付きガスケット、リード線(金線)、金ペースト等を購入する。また、研究成果を発表するため国内学会への参加を予定しており、このための旅費とする。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] J-PARC単結晶中性子回折装置SENJUの高圧試料環境2013
Author(s)
宗像孝司, 中尾朗子, 鬼柳亮嗣, 金子耕士, 長壁豊隆, 大原高志, 花島隆泰, 及川健一, 川崎卓郎, 田村格良, 上床美也
Organizer
第54回高圧討論会
Place of Presentation
新潟
Year and Date
20131212-20131213
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[Presentation] 単結晶構造解析装置 SENJU の高圧試料環境2013
Author(s)
宗像孝司, 中尾朗子, 鬼柳亮嗣, 金子耕士, 長壁豊隆, 大原高志, 花島隆泰, 及川健一, 川崎卓郎, 田村格良, 上床美也
Organizer
日本中性子科学会第13回年会
Place of Presentation
千葉
Year and Date
20131212-20131213
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