2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540435
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中川 尚子 茨城大学, 理学部, 准教授 (60311586)
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Keywords | 非平衡 / ポンピング / タンパク質 / 遅い揺らぎ |
Research Abstract |
研究計画の3年目である平成25年度は、ナノマシンの揺らぎと動作の関係に踏み込んだ研究成果を得つつあり、この研究の完成によって、計画当初にあげた研究目的が達成できるはずである。また、タンパク質の遅い揺らぎを特徴付ける事にも成功し、このような性質の揺らぎを引き出す原因を構造の中に求めていくという、次の段階の研究課題も見えてきた。 以下、上記の二者を説明する。現在進行中のナノマシンの揺らぎと動作の関係についての研究では、外部操作によって機能するナノスケールのポンプを考えている。ポンプする対象は、熱でも、粒子でも、流れが定義できればよい。ポンプの能力を説明するために、ポンピングに共役な場を設定し、その共役場の元での非平衡定常状態と場がないときの平衡状態の差を定量化する。この差とポンプ能力の関係を抽出している。 次に、タンパク質の遅い揺らぎの研究では、ガラスなどの遅い緩和の特徴付けとして、揺動散逸定理の破れから定義される「有効温度」に注目した。熱平衡状態では有効温度は環境温度と一致するが、ガラスの場合は、一般に、環境温度よりも高い一定の値が有効温度として得られる。そこで、単純化したタンパク質モデルの分子動力学計算を行い、その非定常状態から平衡状態への遅い緩和について、揺動散逸定理の破れを調べた。すると、緩和過程がすすむとともに有効温度の値が高い値から環境温度に下がってくる様子が観測でき、この緩和の様が、ある特徴的な活性化エネルギーを持つアレニウス則に従っている事を発見した。しかし、この活性化エネルギーに対応するような構造がタンパク質モデルのどこに隠されているのか、不明である。エネルギー値や形状因子の緩和を見ているだけでは、このような活性化エネルギーを伴うアレニウス則には到達できず、タンパク構造の中の非平衡な一面を取り出せている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電力不足のため見送っていた数値計算専用コンピュータを増強する事ができたので、理論的発展のみならず、数値実験によるデモンストレーションもすすんでいる。ナノスケールでの遅い揺らぎを利用したポンピングの普遍構造を非平衡定常分布と結びつける成果や、タンパク質の遅い揺らぎの特徴付けによりガラスの遅い揺らぎとの違いを定性的に説明した成果にすでに到達しており、計画の最終段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は研究計画の最終年度にあたるので、昨年度までに到達した成果をまとめて発表することに集中する。例題などを増やして、より多くの研究者の関心を引き出せるようにつとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入した数値計算用の機器が予想よりも若干やすかったため。(残額は約1万円であり、ほぼ予定通りに使用している。) 平成25年度に十分に時間が取れず、成果発表のための機会が少なかったので、最終年度でもある平成26年度は成果発表と研究打ち合わせのための旅費を増やす。また、継続している数値計算の推進のため、計算機器や高速化のためのソフトウェアの購入を行う。
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