2012 Fiscal Year Research-status Report
有限要素法によるポーラス・コロイドフォトニック構造の特性解析
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23540436
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
植田 毅 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30251185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 雅留太 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (90569344)
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Keywords | 電磁波 / 構造色 / 有限要素法 / ランダム系 / フォトニック・アモルファス / ポーラス構造 |
Research Abstract |
昨年度、大学院生で研究協力者であった藤井雅留太が秋田県立大学の助教に就任したため、研究分担者とし、昨年度導入を見送った高速演算サーバー、データストレージを同一筐体として、秋田県立大学に導入した。 テーマ(2)については、昨年度有限要素法での数値解析の有効性が確認できた2次元ランダム系での電磁場の伝導特性の有限要素解析を藤井はさらに進めた。更なる、計算精度の確認のため、他の計算法では高精度な計算が難しい金属円柱がランダムに並んだ場合の解析を行った。やはり、金属表面で電場の急激な変化があり、有限要素法でもかなりメッシュを細かくしなければならないことを確認し、光学特性を計算した。また、本研究では構造色モデルとしてポーラス構造を取り扱っており、本格的にポーラス系の解析を行い、表面近くに局在するささやき回廊モードのような状態が現れることを見出した。研究協力者の名古屋大学大学院修士課程の猪飼氏に藤井の開発した2次元用の有限要素法の3次元化を依頼していたが、ランダム構造におけるメッシュの配置が難しく、未だ完成に至っていない。 テーマ(1)については、フォトニック・アモルファス系のモデルとして、球形の泡が並んだ隙間に物質を満たした構造を提唱しているが、球を自己組織化させ、それにシリコンを充てんすることにより、カワセミの羽根の網目構造を作成できることを文献で確認した。 泡の壁が集まる接点となるため、ポーラス系での4分岐構造の数理的解析を行った。また、これまで大阪大学のグループなどがFDTDで解析されてたモルフォチョウの光学特性を京都大学のグループと共同で実際の鱗粉の形状データからモデルを作成し、最も高精度であると思われる境界要素法を用いて解析し、棚構造の食い違いの効果、根元の色素の効果を明らかにし、入射角、仰角が変化しても青色に見える特性を持つことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、昨年度導入できなかった高速演算サーバーを導入できた。メモリは当初予定より大幅に大容量にすることができた。2次元系の解析では誘電体表面において電場の急激な変化があり、細かなメッシュを切る必要がある場合の解析も実行している。 また、ポーラス系の光学特性の解析も順調に進み、新たな光学的状態も発見している。モデルの構築については、実際に生物で構造色を呈する構造は反応拡散系もしくは自己組織化により形成されると考えられるが、提唱しているポーラス系で実験的に生物の構造とほぼ同様のものが作製できることが確認できたことはモデル開発については大きな進展である。 構造色では重要な課題となる光の反射特性の入射角、仰角依存性をモルフォチョウで調べることができた。その構造の影響、バックグラウンドによる光の吸収の影響が大きいことが分かった。カワセミの場合の角度依存性を調べるための大きなヒントとなる。 まだ、猪飼氏が担当した3次元系のプログラムが設計ミスもあり、まだ完成していない。その意味において、計画よりやや遅れが生じていると言わざるを得ない。開発したコードの配布を考慮し、全てのコードを自作することにこだわっていたが、この部分は既存のコード、市販のコードの使用することでリカバリーできる。
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Strategy for Future Research Activity |
藤井は今年度導入した高速演算サーバーを用いて、これまで開発した2次元用コードでランダムポーラス系の光学特性を詳細に調べる。特に、表面に局在するモードの素性を明らかにする。また、有限要素法のコードを3次元系へ拡張する。と同時に、植田は既存の公開、市販コードの実装を試みる。コードの開発は8月をめどとする。 いずれか、早く動作し始めたコードを用いて、構築した羽根の構造モデルを用いた計算を実行し、特性解析を行う。特に、今年度の計画であった、東京大学生産研枝川教授がフォトニッ ク・アモルファス・ダイアモンド構造において、重要であると指摘しているテトラポット構造単体での電磁場の流れ、ポインティングベクトルの流れの様子が調べられていない。3次元コードが完成し次第、この構造の光学特性を詳細に調べる。 獨協医科大学宮本潔教授よりカワセミの顕微鏡写真、構造のサイズ、構成物質のデータを提供されたが、まだ、それに基づき網目構造のモデルを構築するだけの詳細さに欠ける。更なる、高解像度化を要請する。 昨年度はコロイド系の運動と光の直接相互作用のマクスウェル方程式、ランジ ュバン方程式を連立した支配方程式を導出が途中となっている。特に、コロイド粒子の運動がゆっくりであることを考慮し、外力による制御された運動についても考慮することとした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度において1,756,500円が未使用となっている。これは高速演算サーバーが予定より安価になったため、および、演算サーバーの導入が1年遅れ、また、3次元化した計算が本格的に始まっていないため、大容量ストレージを導入を遅らせたこと、研究協力者である猪飼氏の謝金を計上していたが、彼の指導教授(名古屋大学松本敏郎教授)が本課題の一部を彼の修士論文テーマとしたため、支払いの必要がなくなったため、また、成果発表のための国際会議出席を日程的な問題もあり見送ったためである。 次年度において、東京慈恵会医科大学にシミュレーションデータを保存するためのデータストレージおよびデータ処理を行うための演算サーバーを約1,500,000円で導入、慈恵医大と秋田県立大で手分けしてデータ解析を行う。また、藤井は2次元ポーラス系の表面モードの性質について、2013年フランス、ボルドーで開催される7th International Congress on Advanced Electromagnetic Materials in Microwaves and Optics - Metamaterials 2013 Bordeaux, France, (16-21 September 2013)で成果発表予定であり、出張旅費を支出する。また、成果発表のための論文投稿費用および有限要素法の有料コードを使用した場合のライセンス料に充てる予定である。さらに、Finite Element and Boundary Element Applications in Quantum Mechanicsの著者L. Ramdas Ram-Mohanを日本に招聘し、3次元FEMプログラムのチューニングを計画している。
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Research Products
(3 results)