2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540437
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
御領 潤 東京大学, 生産技術研究所, 特任講師 (70365013)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | トポロジー / 絶縁体 / 超伝導 |
Research Abstract |
本研究課題は、凝縮系電子論におけるトポロジカルな状態について議論する事が目的である。この目的にのっとり、現在トポロジカル絶縁体におけるクーペロン凝縮について研究している。トポロジカル絶縁体では、電子の波動関数が運動量空間において非自明なトポロジー的構造を持ち、バルクは絶縁体的であるがエッジや表面ではバリスティックな伝導性を持つ点が顕著な特徴である。申請者は半導体や絶縁体に対して強い電子間引力相互作用を導入した場合に発生するクーペロン(2電子束縛状態. P. Nozieres and F. Pistolesi: Eur. Phys. J. B 10 (1999) 649) の凝縮による超伝導状態が、トポロジカル絶縁体の場合にはどのような対称性を持ち得るかについて、具体的に蜂の巣格子上の Kane-Mele 模型を用いて調べている。すなわち、絶縁状態のトポロジカルな秩序が、 Cooperon 凝縮状態にどのような影響を与えるか系統的に調べている。現段階において、バルクで発生するクーペロンの対称性をはっきりさせることが出来た。電子間相互作用として密度ー密度形の引力相互作用を同一サイト、最近接サイト間、次最近接サイト間に導入し、クーペロン凝縮状態をつくる。その際群論的手法(蜂の巣格子系がもつ対称性C6v)に基づきクーペロンの対称性を分類し、どの対称性がもっともエネルギー的に安定であるか議論する。その結果半充填の場合、最近接サイト間のペアリングでトポロジカルな状態があらわれる事が判明した。しかしここではトポロジカル数が異なる状態がいくつか縮退している。この縮退がエッジ状態を取り込む事により解けるかどうか、さらには、絶縁状態のトポロジカル数とクーペロン凝縮状態のトポロジカル数との間に関連性・類似性が見られるかどうかが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トポロジカル絶縁体以外にも、空間反転対称性を破る結晶中の超伝導状態とトポロジーの関係についても議論しており、より幅広い見地から凝縮系電子論におけるトポロジーの役割について新たな知見を得つつあるため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
Kane-Meleトポロジカル絶縁体のクーペロン凝縮について引き続き議論する。特に半充填の場合、トポロジカル秩序により保証されるヘリカル・エッジ状態の寄与が大変興味深い。バルクおよびエッジで favor されるペアリング状態の対称性は同じなのか違うのか、互いにどのように影響しあうのかなど、トポロジカル絶縁体特有の様々な非自明な問題が浮かび上がり、解明されるであろう。応募者はこの問題についてボゴリウボフ・ドジャン方程式を用いたセルフ・コンシステントな解析をすすめている。この研究はグラフェンの超伝導に対しても知見を与えるであろう。さらには異なる格子上の模型や、3次元系への拡張も考え、より一般的・統一的な立場からの理解を深めて行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請者は本年度12月31日までスイス連邦工科大学に出向中で、主に一時帰国時の国内旅費について使用する予定である。
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