2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540437
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
御領 潤 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (70365013)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
Keywords | 凝縮系のトポロジー的性質 / 異方的超伝導 / 輸送現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属や半導体における電子スピンの輸送現象は最近約10年来のホットなトピックの一つである。電場による磁化の制御の可能性が拓けるなど、基礎的な観点からも応用的な観点からも注目されている。これらの現象はスピン軌道相互作用の効果により発生する。ところで超伝導体でもスピン軌道相互作用が重要な役割を果たしている物質があまた存在する。たとえば、Sr2RuO4ではスピン軌道相互作用の影響でカイラルp-波状態と呼ばれるペアリングが現われる。詳細は省くが、このペアリング対称性から試料表面にカイラル・エッジ電流、すなわち一方向に流れる電流が発生する。素朴な観点からはカイラル・エッジ電流は電荷のみを運ぶ。しかし Sr2RuO4の場合、エッジ電流が電荷と同時にスピンも運ぶことが最近数値計算によって示された(Y. Imai et al, Phys. Rev. B 85,174532(2012)). この現象の根本はカイラルなペアリング状態とスピン軌道相互作用にあるものと推察される。 この知見をより一般化するために、似たような状況が実現されている別の物質を考えることが有効となる。その候補としてSrPtAsという物質が挙げられる。この物質も超伝導になる(Y. Nishikubo et al, J. Phys. Soc. Jpn, 80, 055002(2011))。ペアリング対称性はまだ確定はされていないが、カイラルd-波状態である可能性が非常に高い。カイラルd-波状態もまたカイラル・エッジ電流をサポートする。そして、第一原理計算により得られたバンド構造からスピン軌道相互作用が効いていることも示されている。すなわち Sr2RuO4 と類似の状況が実現されている可能性が高い。 本年度は超伝導体のペアリングをカイラルd-波と仮定した上で試料表面状態に関する数値計算を行い、Sr2RuO4 と同様にエッジ状態が電荷と同時にスピンも運ぶか調べた。その結果、確かにスピン流が流れること、それと同時にエッジにスピン集積が起こることを数値的に確かめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カイラルな超伝導状態において、トポロジー的に保護されて生じるエッジ状態の輸送現象に対するスピン軌道相互作用の役割を明確にしつつある。本研究課題は凝縮系のトポロジカルな状態の新たな性質を明らかにすることであり、研究課題・目的にそって順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでは数値的計算がメインであったが、解析的計算によってより一般的なかたちで超伝導ペアリングのカイラリティ、スピン軌道相互作用およびエッジ電流のスピン輸送の間の関係について調べて行きたい。また、エッジ領域のみならず、不純物まわりに現われる状態と電流・スピン流分布、渦糸を入れた場合の問題、あるいは多結晶状態で生じ得る twin boundary の効果等、さまざまな拡張が考えられる。
|
Causes of Carryover |
海外への長期滞在期間中(H23-H24年度)に支給された助成金を、海外滞在中であったため使用する事が出来ず、繰り越されている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、国内外の学会への出席やセミナー講演、および研究交流のために使用する。
|
Research Products
(10 results)