2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540439
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
巾崎 潤子 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (10133331)
|
Keywords | ソフトコア / ガラス転移 / 比熱 / エントロピー / 逆べきポテンシャル / 相図 |
Research Abstract |
ソフトコア一成分系の広い範囲での相図を分子動力学により求めたので、これに沿って比熱やエントロピーなどの熱力学量の変化について、NVEアンサンブルの場合を中心に詳しく検討した。液相線に沿って急冷した場合と、NVEアンサンブルで保持した場合に起こる非平衡緩和について熱力学的挙動を詳しく調べ、ポリノミアルに展開した式を用いて表現することができた。この結果、どちらの場合も比熱の異常などを伴う過程であり、熱力学的にガラス転移とみなしてよいことが明らかになった。つまり、ガラス転移には相図上で観測すると、構造的にも熱力学的にも複数の経路がある。 さらに、系がガラス化する場合と、結晶化する場合の差異についても検討した。 ガラス化では近距離構造の緩和が起こって局所パッキングの良い構造ができているのに対して、結晶化が起こる場合では長距離の構造が発達するなど影響を受ける領域に違いがある。相図を用いることで、温度を上げていった場合との経路の違いについても、構造変化と結び付けて議論することができた。温度履歴の異なった場合にもこれらの距離の違いを考慮する必要があることを明らかにした。これらの成果について、複数の国際会議で報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ソフトコア系の熱力学を相図に沿って検討してきた。急冷の場合の変化と、NVE条件で保持した場合に起こる非平衡緩和を比較して、どちらも熱力学的にもガラス転移とみなせることを明らかにしてきた。前年度までにソフトコアの結晶での熱力学の表式についての検討を終え、今年度は、予定通りにガラス転移に関する熱力学の詳細を分子動力学に基づいて扱うことができたので、おおむね順調に進展しているといえよう。また、複数の国際会議で発表して、関連する研究者の意見を聞くことができ、今後の方針もはっきりしてきている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ソフトコア系におけるガラス転移現象が、相図上でどのような経路を辿って起こるのかについて詳しく検討していく。これには、アンサンブルや冷却速度の違いが影響が考えられる。そこで、異なった条件下でのMD計算から、具体的にどのような経路をたどるか、またその時の揺らぎの特徴はどのようなものかなどについて調べる。 拡張アンサンブル用のプログラムの整備をすると同時に、揺らぎの表記や定量化の方法などについて検討していく。 また、これまで主にNVEアンサンブルを用いていたのに対して、実験系の研究者からも要望が出され、実験と比較しやすい圧力一定の条件下での挙動を調べる必要が生じている。これについてはNVEと同様の非平衡緩和の式の誘導を圧力一定の条件下で進めているので、これをまとめていきたいと考えている。また関連系のガラス転移との関係についても検討していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに行ったガラス転移の熱力学のシミュレーションについて国際会議で発表したところ、会議の参加者から研究成果に関する有用な助言と強い要望があり、NPTアンサンブルの場合について、より詳細な研究を進める必要が生じた。現時点での成果を国内でもう一回発表する予定であったのをとりやめ、引き続き次年度にNPTアンサンブルの場合についても詳細な研究を行うこととしたい。 NTPアンサンブルでの式の誘導、シミュレーションを行っていく上で必要なメディアの購入、パソコンの拡充の他、国内の会議で発表をする際の旅費の一部に当てる予定である。
|