2011 Fiscal Year Research-status Report
スピングラスにおけるミクロカノニカル分布とカノニカル分布の等価性・非等価性
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23540440
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西森 秀稔 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (70172715)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アンサンブルの非等価性 / ランダム系 / スピン系 |
Research Abstract |
まずランダムさがない系について,短距離相互作用をしている場合にアンサンブルの等価性が成立するメカニズムを厳密解を通して調べた。2次元および3次元の球形模型を多体相互作用に拡張すると,条件によっては相転移が1次になることが知られている。個の問題についてはカノニカル分布による解析しか存在しなかったが,新たにミクロカノニカル分布で解析を行った。その結果,平均場的な振る舞いが見られるパラメーター領域が存在し,そこでは一見アンサンブルが非等価に振る舞うように見えることが明らかになった。しかしながら,空間的な相分離のメカニズムを導入すると,ミクロカノニカル分布の結果がカノニカル分布の結果に帰着できることが示された。こうして,相分離およびそれに伴うマックスウェルの構成を適用することによってアンサンブルの等価性が回復するという,一般的定性的な描像が具体的かつ厳密な計算によって例示された。 つぎに,ランダムさの影響を調べるために相互作用は完全に強磁性だが,外部磁場の強さと符号がランダムである模型を厳密に解析した。その結果,ランダムさのないBEG模型と定性的に類似した相図が得られること,その結果,1次相転移点付近でアンサンブルの非等価性が出現することが明らかになった。これは,ランダムさを含む系でアンサンブルの非等価性が示された最初の例である。こうして,ランダムさはアンサンブルの非等価性の出現にとってかならずしも大きな影響を与えないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずランダムさがないスピン系について,アンサンブルの等価性が成立するメカニズムを具体例で検証するという目標は達成された。ランダムさを含む系についても研究が進行中であり,順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ランダムさを含む系について,適切な具体例を探して厳密解を構成し,アンサンブルの非等価性が成立するか否か,成立する場合にはどのような条件が必要あるいは十分条件について研究を進めていく。ランダム磁場の場合については知見が得られたので,スピングラスの場合どうなるかを調べる。方向性は確立している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は具体例の検証の段階であったため,国内外での会議における成果発表は24年度に積極的に行うこととして23年度は研究自体に集中した。このため23年度は執行額に残高が生じた。24年度は研究発表のための会議出席等に旅費を計上する。さらに,計算を進めてデータを整理するためにPCを購入する。
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Research Products
(4 results)