2013 Fiscal Year Research-status Report
スピングラスにおけるミクロカノニカル分布とカノニカル分布の等価性・非等価性
Project/Area Number |
23540440
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西森 秀稔 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (70172715)
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Keywords | 長距離相互作用系 / イジング模型 |
Research Abstract |
長距離相互作用の存在は,アンサンブルの等価性・非等価性の決定に極めて重要な役割を果たしている。今年度の研究では,相互作用が距離の関数としてべきで減衰する場合の古典的なスピン模型と,完全に無限の相互作用レンジを持つ系の自由エネルギーが熱力学的極限で一致するための条件に関して,前年度の成果を踏まえてさらに理論の精密化をはかった。特に,ランダムな磁場が各サイトにかかっている場合に,長距離相互作用系と無限レンジ系の熱力学的な自由エネルギーが同じ値を取るための条件を,より緩やかなものに緩和するため,問題の数学的構造の詳細な検討を進めた。ランダム磁場については,伝統的な手段であるレプリカ法を使用せず,大数の法則(ないし自己平均性)を使って扱い,レプリカ数を0に持って行く極限で生じる曖昧さを回避した。その結果,相互作用のべき減衰の指数が空間次元より小さいか等しいときに、カノニカル分布における無限レンジ系の自由エネルギーとべき減衰系の自由エネルギーが完全に一致することが証明された。これは,ランダムさのある長距離相互作用系の自由エネルギーに関する初めての厳密な結果である。前年度までは,相転移の次数やパラメータの範囲に制約が着いた形での定理しか導けなかったが,今年度の研究によりこれらの制約条件をほとんどすべて外しても同じ結果が成立することが明らかになった。量子系その他,より広範な対象において同様の結果が成立するかどうかが今後の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ランダム磁場のかかった古典長距離相互作用系については,ほぼ問題を解決した。
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Strategy for Future Research Activity |
ランダム磁場の古典系ではほぼ問題が解決したので,量子系やスピングラス系において類似の結果が成立するかが今後の焦点となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初目的としたランダム磁場のある古典系における証明に予想より時間がかかり,最終的な成果をまとめるまでにさらに数ヶ月を要することになったため。 最終成果を論文として発表するための掲載料,成果発表のための国内および外国出張旅費として使用する予定である。
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