2011 Fiscal Year Research-status Report
テンソル積状態の量子エンタングルメント制御と数値くりこみ群
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23540442
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
奥西 巧一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30332646)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | テンソル積 / くりこみ群 / エンタングルメント / 密度行列 |
Research Abstract |
Disentanglerなどのエンタングルメントの制御する操作と行列積状態の間の関係を重点的に調べた。とくに、Wilsonの数値くりこみ群のメカニズムをエンタングルメントの観点から解析するために、密度行列くりこみ群を用いた数値計算を行った。これにより、行列積型波動関数にもとづいてエンタングルメントエントロピーを求めることが可能になる。この際、Wilson型数値くりこみ群特有の問題点として、エネルギースケールが大きく異なるため桁落ちの問題がある。これを克服するために新たに4倍精度の計算を行った。その結果、不純物スピンが低エネルギー極限で遮へいされ、伝導電子とシングレットを組み、エンタングルメントエントロピーがlog 2の値をとることを初めて実証した。なお、この計算は本科研費により購入した計算機を用いて遂行した。また、大阪大学の上田博士と神戸大学の西野准教授との共同研究において、テンソル積状態を従来型の格子ではなく、スケールフリー型のネットワークに分解した新たなくりこみ群を考案し、その構成を現在起動に乗せつつある段階である。これらの共同研究には本科研費の旅費が非常に重要な役割を果たしたことを付記しておく。加えて、開発した数値手法の応用として、量子スピンチューブの磁場中量子相転移の解析を行い、スピンカイラリティーの自由度に関するあらたな量子相転移を発見した。一方、研究会「量子多体系のエンタングルメントをくりこみ群」を京都大学基礎物理研究所において主催し、テンソル積状態や量子エンタングルメントなどに関連した日本国内の研究の現状と問題点の取りまとめを行い、今後の研究の方向性を決定づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Disentanglerなどのエンタングルメントの制御する操作と行列積状態の間の関係を重点的に調べた結果、とくに、Wilsonの数値くりこみ群のエネルギースケール性とエンタングルメンとの関係を明らかにすることができた。当初、エネルギースケールの変化による桁落ちの問題があったが、これは4倍精度のプログラムに再構成することで解決できた。エネルギースケールとエンタングルメントの制御との相互関係という新たな着眼点を導入しており、既存の平坦な時空におけるエンタングルメントエントロピーの議論に一石を投じるものである。したがって、この解析結果をそのまま掘り下げていけば、くりこみ群による状態数の削減メカニズムの総合的な解明につながる重要な進展を得られたと考えられる。また、テンソル積状態を従来型の格子ではなく、スケールフリー型のネットワークに分解した新たなくりこみ群を考案し、その構成を現在起動に乗りつつある段階である。テンソル積型の状態を高次元へ拡張するうえでの新しいアイデアであり、具体的なアルゴリズムの構成の見通しも立ち、今後、順調に研究が進んでいくと考えられる。以上より、研究はおおむね順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
VBS状態のDisentanglerの一般化とトポロジカル秩序による分類や、基本的モデルでのエンタングルメントを制御する演算子の性質をしらべていく。Wilson型数値繰り込み群におけるエネルギーのスケール性と拡張された時空でのエンタングルメントは、基礎物理的に重要な問題を含んでいることが分かってきたので、そちら方向の研究に重みを置く予定である。具体的にはXY模型などの自由フェルミ粒子系での実空間エンタングルメントとエネルギーのスケール性との関連を、解析的および数値的な手法で調べる。一方、高次元のテンソル積状態にDisentanglerのアイデアを埋め込み、数値くりこみ群アルゴリズムの開発を行う。とくに、ペアの作用させる範囲を広げていきながら非局所性を徐々に取り込んでいき、エンタングルメントエントロピーがどのように減じていくかを評価する。本研究のアプローチではDisentangler自体に非局所性を持たせることと、テンソルネットワークのトポロジー自体をエンタングルメントを保ちやすい形に工夫することで精度の改善を狙う点が本質的である。具体的な研究遂行においては、神戸大の西野准教授および理化学研究所の上田博士研究員などと連携をとりながら研究遂行を図る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の主な主要用途は、計算能力補充用の計算機の購入と、共同研究体制維持のための出張旅費を予定している。エンタングルメント制御の数値計算では、エネルギースケール、もしくは長さスケールの大きくことなる状態間の重ね合わせを直接扱える高精度の計算が必要になる。しかし、このための4倍精度の計算にはたいへん時間がかっているのが現状である。そこで、計算能力の増強することで研究の推進速度を上げる必要がある。本科研費において最新のCPUを搭載した計算機を補充する予定である。次に、本研究の性質上、多方面にわたる分野が関係するため、神戸大や理化学研究所などの共同研究者との研究打ち合わせが、研究遂行の重要な下支えになっている。当初の予定に加えて、拡張された時空でのエンタングルメントなど、素粒子論との境界をまたぐ幅広い広がりを見せつつある。このため、これらの共同研究体制を維持するための旅費が重要となるが、本科研費により引き続きそのための旅費をまかなう予定である。また、本科研費により国際会議などに参加して早い段階から成果をアピールする予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Novel Phase Transition Probed by Sound Velocity in Quasi-One-Dimensional Ising-Like Antiferromagnet BaCo2V2O82011
Author(s)
Hironori Yamaguchi, Shadi Yasin, Sergei Zherlitsyn, Kumiko Omura, Shojiro Kimura, Shunsuke Yoshii, Kouichi Okunishi, Zhangzhen He, Tomoyasu Taniyama, Mitsuru Itoh, and Masayuki Hagiwara
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn
Volume: 80
Pages: 033701
DOI
Peer Reviewed
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