2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540443
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| Research Institution | Niigata University |
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Principal Investigator |
大野 義章 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40221832)
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| Keywords | 鉄系超伝導体 / 動的平均場理論 / エリアシュベルグ方程式 / ５軌道ハバード模型 / 繰り込み因子 / 磁気揺らぎ / 軌道揺らぎ / s++波超伝導 |
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| Research Abstract |
鉄系超伝導体に対する角度分解光電子分光（ARPES）で観測されたバンド構造は、第一原理計算で得られたバンドを全体にZ=1/2～1/5程度繰り込むことによりほぼ再現されると考えられてきたが、最近の高分解能ARPESでは繰り込み効果の大きなバンド（軌道）依存性が観測され、さらに、特定の軌道の繰り込み因子Zがゼロとなる軌道選択モット転移の可能性も議論されており、繰り込み効果を顕わに考慮できる強相関理論の重要性が高まってきた。そこで、鉄系超伝導体の第一原理計算に基づく５軌道ハバード模型を、強相関領域も記述できる非摂動的手法である動的平均場理論（DMFT）を用いて調べた。得られた局所自己エネルギーの強い軌道依存性から、dxz、dyzおよびdx2-y2軌道の繰り込み因子Zが他の軌道のZに比べて非常に小さくなり、現実的な相互作用に対して繰り込まれたバンドが高分解能ARPESを良く再現すると共に、軌道選択モット転移近傍の金属状態であることも分かった。
次に、DMFTに基づいて磁気感受率と電荷・軌道感受率を計算し、その発散によって系のとりうる秩序状態を調べた結果、ストライプ型反強磁性磁気秩序および強軌道秩序は従来のRPAの結果と比べて共に抑制され、特に両者が拮抗する領域では特に抑制が大きくなり、現実的な相互作用パラメータの値に対して磁気秩序と軌道秩序（構造相転移）が実現する結果が得られた。さらに、磁気および電荷・軌道感受率から有効ペアリング相互作用を求め、エリアシュベルグ方程式に基づき超伝導を議論した結果、DMFTではRPAと比較して揺らぎが局所的に（q依存性が弱く）なるため、強いq依存性が必須の磁気揺らぎによるs±波超伝導領域は大きく抑制されるのに対して、軌道揺らぎによるs++波超伝導はq依存性が弱い方が超伝導に有利となるため大きく拡がり、s±波超伝導に比べてより安定化されることが示された。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動的平均場理論（DMFT）は、強相関領域に対しても有効な非摂動的手法として様々な強相関系の研究に用いられてきたが、自己エネルギーやバーテックスの振動数依存性を正確に考慮できる一方、波数依存性は無視されるため、電子相関効果に起因するd波やs±波などの異方的超伝導の議論ができなかった。本研究では、DMFTで得られた磁気および電荷・軌道感受率から有効ペアリング相互作用を求め、それをエリアシュベルグ方程式に代入することにより、超伝導の異常自己エネルギーの波数依存性を考慮した異方的超伝導の議論が可能となった。また、これにより、DMFTに対して自己エネルギーの波数依存性を補正するDMFT+Σk法を開発するという当初の目的も達成された。
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| Strategy for Future Research Activity |
鉄系超伝導体では、電子間クーロン相互作用による電子相関効果と、電子フォノン相互作用による軌道と格子の強結合効果の両者がともに重要であることが、これまでのRPAの計算によって明らかにされてきた。本年度は、５軌道ハバード模型に対してDMFTを用いて電子間クーロン相互作用による電子相関効果を調べ、また、電子フォノン相互作用の強結合効果に関しては、簡単化した２軌道模型による予備的な研究を行った。今後は、現実的な５軌道模型に対して、DMFTを用いて電子相関と電子フォノン相互作用をともに考慮した計算への拡張を行う。さらに、構築された手法を、High-Tc物質探索の指針となる物質設計へと応用する。
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| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り、国際会議および日本物理学会における研究成果発表の旅費、および、演算サーバー使用料と数値計算データ整理のための謝金として使用する。
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Research Products
(12 results)
