2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23540443
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大野 義章 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40221832)
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Keywords | 鉄系超伝導体 / 超伝導発現機構 / 16バンドd-p模型 / 軌道揺らぎ / 磁気揺らぎ / 弾性ソフト化 / s±波超伝導 / 非磁性不純物効果 |
Research Abstract |
鉄ニクタイド高温超伝導体では、反強磁性(AFM)揺らぎと強軌道(FO)揺らぎの2つの顕著な揺らぎが存在し、前者を起源とするs±波と後者を起源とするs++波の2つの超伝導機構が議論されてきた。本研究でもこれまで、鉄のd軌道間クーロン相互作用およびd軌道とフォノンとの結合効果によって軌道揺らぎが増大しs++波超伝導が実現することを示した。その際、FO揺らぎと同時に反強軌道(AFO)揺らぎも増大し、このAFO揺らぎがAFM揺らぎに打ち勝つことによりs++波が実現するが、AFO揺らぎの増大は実験で直接観測されていないことや、AFO揺らぎとAFM揺らぎは競合して超伝導転移温度Tcを下げることなどの問題があった。 最終年度は、鉄のd軌道に加えてニクトゲンのp軌道も顕わに含む16バンドd-p模型に基づき、鉄d電子とニクトゲンp電子間のクーロン相互作用に起因する新しいFO揺らぎ増大のメカニズムを提案した。まず、水素原子軌道型の波動関数を用いてd-p電子間クーロン相互作用の軌道依存性を定量的に計算し、現実的なd-pクーロン相互作用の値に対して弾性定数C66のソフト化に対応するFO揺らぎが増大することを示した。このd-pクーロン相互作用は、d電子間クーロン相互作用によって増大するAFM揺らぎには何ら影響せず、またAFO揺らぎの増大も伴わない。このとき、FO揺らぎを媒介とする電子およびホールのそれぞれのフェルミ面内での引力ペアリング相互作用と、AFM揺らぎを媒介とする電子とホールのフェルミ面間の斥力ペアリング相互作用は、波数空間で住み分けて働くため互いに競合すること無く、協力してs±波超伝導を導くため高いTcが得られる。さらに、このFO揺らぎの協力の下で実現するs±波超伝導は、従来のAFM揺らぎのみによるs±波では説明できない非常に小さなTcの非磁性不純物効果の実験も説明できることが分かった。
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Research Products
(20 results)