2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540446
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
樋口 雅彦 信州大学, 理学部, 教授 (10292202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 克彦 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (20325145)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 拡張された制限つき探索理論 / 電流密度汎関数理論 / 時間依存密度汎関数理論 / 有限温度ECS理論 / 動的ECS理論 / 交換相関エネルギー汎関数 / 交換相関ポテンシャル / 磁気的ブロッホ定理 |
Research Abstract |
本年度の研究実績を、研究実施計画に挙げた項目ごとに述べる。(1) 静的CDFT-VEAを有限温度の場合へ拡張: 本研究課題がスタートする前にすでに開発済みであった静的CDFT-VEAは、絶対零度の系でのみ適用可能な理論である。これを、マーミンの理論を用いて有限温度の場合へ拡張した。この新しい理論は、常伝導相はもとより超伝導相にも適用できるような一般化されたものである。さらに、有限温度の場合にも必須となる交換相関エネルギー汎関数の結合定数積分表示も導いた。(2) 外部磁場下のハミルトニアンの対称性の確認: 外部磁場が印加されたときに成り立つ「磁気的ブロッホ定理」を考慮に入れたシリコン結晶の電子構造計算を行った。相対論的な効果も考慮に入れた強束縛近似法を用いてた。磁気的ブロッホ関数の影響で、エネルギー状態密度の磁場依存性にバタフライ型の周期構造が現れた。これは、磁場下二次元正方格子のエネルギー状態密度で有名なバタフライ構造と類似したものである。(3) 動的CDFT-AVEAの理論的枠組みの構築: 動的CDFT-AVEAでは、静的CDFT-VEAにおける交換相関ポテンシャルを借用する。静的CDFT-VEAでは交換相関エネルギー汎関数の具体的な表式はあるが、それに対応するポテンシャル表式は無かった。電子密度および常磁性電流密度による変分を実行し、交換相関ポテンシャルの具体的な表式を導いた。この表式は動的CDFT-AVEAの交換相関ポテンシャルとして使えるものである。(4) 動的ECS理論の構築の準備: 動的ECS理論の構築の準備として、本年度はまず、通常の密度汎関数理論の動的理論(td-DFT)の確認作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、研究実施計画に挙げた項目はおおむね順調に進展している。研究実施計画に挙げた項目ごとに自己点検を行う。(1) 静的CDFT-VEAを有限温度の場合へ拡張: 本研究課題に限って言えば、常伝導相に適用できる理論で十分である。このことを考えると、この項目に関しては当初の計画以上に進んだと言える。(2) 外部磁場下のハミルトニアンの対称性の確認: 当初の計画では、磁場下シリコン結晶の電子構造計算まで行うものではなかった。このことを考えると、この項目に関しても当初の計画以上に進んだと言える。(3) 動的CDFT-AVEAの理論的枠組みの構築: この項目に関しては、当初の計画通りの進展と言える。(4) 動的ECS理論の構築の準備: この項目に関しては、当初の計画よりやや遅れている。当初の計画では、動的ECS理論の骨子が出来上がっているはずであった。本年度上記の(1), (2)が進展したこともあってそちらに力が注がれた分、この項目がやや遅れることになってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず第一に、23年度にやや遅れた「動的ECS理論の構築」を行う。これができれば、23年度に導いた「動的CDFT-AVEAの交換相関ポテンシャル」を結合させて、実際の数値計算の段階に進むことができる。 さらに、23年度に構築した「有限温度の場合の静的CDFT-VEA」を用いて、ド・ハース‐ファン・アルフェン(dHvA)効果の再考を行う。具体的には、バンド計算によって得られた電子構造を使って、自由エネルギーとそこから求められる磁化率を計算する。この際、23年度で確認した「磁気的ブロッホ定理」も考慮に入れて実行する。 それらの後に、開発した動的CDFT-AVEAの理論を使って、メタマテリアルの電磁応答現象の解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、次年度使用額が生じた。これは当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したためである。この分の研究費も含めて、以下使用計画を述べる。 本研究計画を遂行するためには、分担者との研究打ち合わせは必須である。そのための国内旅費をおのおの一回ずつ予定している。また、研究成果発表を行う経費として、国内・国外旅費および研究成果発表費を計画している。 計算機自体はすでに所有しているが、計算機関連消耗品代は計画している。さらに情報収集のための書籍・文献代金も計画している。
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