2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540446
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
樋口 雅彦 信州大学, 理学部, 教授 (10292202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 克彦 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (20325145)
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Keywords | 動的CDFT / 拡張された制限つき探索理論 / 電流密度汎関数理論 / 静的CDFT / メタマテリアル / 超伝導 / 強束縛近似 / 相対論的効果 |
Research Abstract |
24年度の研究実績を研究実施計画に挙げた項目ごとに述べる。 (1)動的CDFTの構築: メタマテリアルにふさわしい「動的CDFT」を構築する際、スタートのハミルトニアンの中に、系内部で誘起された横場のエネルギーを入れなければならない。通常の「静的CDFT」ではこの効果は小さいので無視をするが、メタマテリアルでは内部の電磁場を精度良く予言せねばならないのであらわに扱わなければならない。この事情は、磁場下での超伝導状態(マイスナー状態)の場合と同じである。従来の静的CDFTではあらわには取り扱わなかった電流間の相互作用を扱うことで、メタマテリアルで重要な横場の効果が精度良く表せる。 (2)dHvA効果の再考のための磁場下固体の強束縛近似法: 23年度考察済みの磁場下固体の対称性に加え、24年度はさらに相対論的効果も同時に考慮した強束縛近似法を開発した。相対論的な強束縛近似法の定式化は従来には無くさらに磁場印加の効果も同時に取り込んだ定式化はもちろん無かった。テスト計算としてシリコン(金属ではないがフェルミ準位近くのバンド構造のデータがたくさんある)の計算を行った。 (3)磁場下超伝導体における静的CDFT: 動的CDFTの構築や静的CDFTの整備を行う過程で、磁場下超伝導体も本研究課題「拡張された制限つき探索理論(ECS理論)の電流誘起系への適用」の範囲内で、十分手に届くことが分かり研究をスタートした。有限温度のECS理論も23年度構築済みであったことも大きい。まだ一重項超伝導体ではあるが、その定式化および交換相関エネルギー汎関数の結合定数積分表示が導出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、研究計画で挙げたテーマに関してはおおむね順調に進展している。さらに当初研究計画で挙げていなかったテーマで、本研究課題に関連のある超伝導のマイスナー状態(この系も研究課題の「電流の誘起した系」である)の研究も進展している。項目ごとに自己点検を行う。 (1)動的CDFTの構築: 研究計画で述べているように、本研究では、動的CDFTを適用する際にはその「実用スキーム」とも言うべき「動的CDFT-AVEA」を使用する予定である。すでに23年度AVEAの具体的なポテンシャル形は完成している。24年度はさらに、メタマテリアルで重要な横場の効果をあらわに扱って、本来AVEAに担わせていた効果を直接的に計算できる形式に改善した。これは当初研究計画では予定しなかった改善であり、その意味において当初の計画よりも進んだと言える。 (2)磁場下固体の強束縛近似法: 24年度は数値計算を基礎にdHvA効果の再考を行う予定であったが、磁場下強束縛近似法のプログラム開発に手間取り計画が遅れている。当初研究計画に無かった相対論的効果の取り込みは完成したものの(24年度)、この項目は全体としてやや遅れている。 (3)磁場下超伝導体の静的CDFT: 24年度は一重項超伝導体ではあるが、転移温度と臨界磁場を予言できる理論が出来上がった。この研究は当初研究計画には無かったものであり、その意味では本研究課題の予想以上の進展に貢献している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず第一にメタマテリアルへの適用を目指す。そのために静的CDFTの交換相関ポテンシャルを借用する「動的CDFT-AVEA」(動的CDFTの実用スキーム)を実行する。ポイントの一つである静的CDFTの交換相関ポテンシャルは既に23、24年度に開発済みである(24年度考察した横場の効果によりAVEAの負担が軽減したポテンシャル)。もう一つのポイントは、動的CDFT-AVEAで求めた電荷密度と電流密度を使って、微視的マクスウエル方程式から電磁場を求める過程である。まずは試料形状を特定しないバルクを仮定して解を求めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、次年度使用額が生じた。これは当初計画で見込んだよりも安価に研究が遂行できたためである。この分の研究費も含めて、以下使用計画を述べる。 研究成果の発表のため、国際会議(海外2回、国内1回)に出席する予定である。国内の研究会・学会にも数回程度参加予定である。また、研究成果を学術論文の形でも発表予定であり、そのための予算も計画している。 さらに本研究計画を遂行するに当たっては、分担者との打ち合わせは必須である。そのための旅費も計画している。 計算機自体はすでに所有しているものを使うのであるが(当初研究計画)、計算機関連の消耗品に関しての予算は必要である。これも計画している。
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