2012 Fiscal Year Research-status Report
乱流-非乱流境界面近傍の構造とエネルギー・物質輸送機構
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23540447
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
金田 行雄 愛知工業大学, 工学部, 教授 (10107691)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 卓 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10262495)
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Keywords | 乱流-非乱流境界面 / 直接数値シミュレーション / 条件付き統計解析 / 乱流の構造 / エネルギー輸送 / 物質輸送 / 一様等方性乱流 / 非一様乱流 |
Research Abstract |
自然や科学技術に現れるさまざまな流れにおいて、しばしば乱れの非常に強い領域と弱い領域の境界面(乱流-非乱流境界面、以下T-NT界面と呼ぶ)が現れる。平成24年度は前年度に引き続き、大規模直接数値シミュレーション(Direct Numerical Simulation;以下DNSと略記する)のデータ解析を用いて、高いレイノルズ数の乱流中のT-NT界面近傍の(A)流れの構造、(B)エネルギー輸送、(C)物質輸送機構の視点から研究を行った。その主な研究実績の概要は以下のとおりである。 (A)一様等方性乱流中の強いT-NT界面を伴う薄くて強い剪断層に着目し、その形状と内部における渦度および速度分布を、大規模DNSデータの解析によって定量的に明らかにした。その結果、その層の厚みがコルモゴロフ長の約10倍であり、層の内部で微細渦がおおむね層に平行な方向に向き、渦同士の間隔はおおよそ層の厚み程度でかなり密に分布していることが分かった。また実験データとDNSデータとがお互い整合していることが分かった。 (B)大きな渦から小さな渦へのエネルギーの輸送、およびその逆方向の輸送が上記の薄くて強い剪断層内部、およびその外側近傍で強く起きていることが分かった。その層の内部では強い渦度が存在し、激しいエネルギー散逸が起きている。その散逸の程度は外部領域における散逸の約10倍程度であり、その散逸を賄う程度のエネルギーが層の外部から流入していること、およびこのことはRapid Distortion理論(RDT)と整合していることが分かった。 (C)流れにより運ばれる粒子群の追跡を超並列コンピュータを用いて効率的にシミュレートするためのいくつかの数値計算スキームを検討し、その優劣を比較した。また超並列コンピュータによる流れ場のDNSを行い、T-NT界面付近の乱流構造の時間発展のデータベースを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄で述べたように、(A) T-NT界面を伴う薄くて強い剪断層近傍の流れ場の構造について、おおむね当初予定通り一様等方性乱流の大規模DNSデータの解析を行い、その構造を調べることができた。さらに、実験家の協力を得て、実験データとの比較も行うことができた。(B)エネルギー輸送については、一様等方性乱流中の上記剪断層の内部および近傍における輸送を定量的に明らかにできた。また、Rapid Distortion理論とDNSデータとの比較により、その整合性を示すことができた。(C)物質輸送機構については、流体運動によって運ばれる粒子群を超並列コンピュータを用いて追跡のための数値アルゴリズムについての知見を得ることができた。また乱流場の時間発展のデータベースを構築した。 以上により、当研究はおおむね順調に進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降も平成24年度までと同じ研究組織を構成し、引き続き研究を行う。具体的には以下のとおり研究を行う。 (A)T-NT近傍の構造: 一様乱流だけでなく、非一様乱流についてもDNSデータの条件付き統計解析によって、境界面近傍およびその他の領域における速度や渦度場を比較し、T-NT境界面近傍の特質の抽出を行う。 (B)エネルギー輸送機構:乱流中のエネルギー輸送機構についてとくに相互作用する渦のスケールへの依存性に着目して解析を行い、エネルギーカスケード機構を調べる。また、一様乱流についてのこれまでの成果に基づいて、非一様乱流中のエネルギー輸送についても調べる。 (C)物質輸送機構:これまで準備してきた粒子追跡コードを用いて一様乱流中のT-NT境界面近傍の粒子の運動をシミュレートし、物質輸送機構、境界面移動・形成過程を調べる。また、T-NT境界面近傍以外の領域との比較により、N-NT境界面近傍の特質を明らかにする。非一様乱流についても同様に物質輸送機構を調べる。 また、最終年度にあたる平成25年度はこれまでの成果を統合する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、「研究実績の概要」欄の(A)で述べたように、実験データとの比較、および(B)のRDTに基づく、乱流中のエネルギー輸送についてのモデル検証が大きく進み、それに伴って当初平成24年度に予定していた名古屋大学情報基盤センターのスーパーコンピュータを用いての大規模データ解析、およびそのための計算機使用予算などの一部を平成25年度に繰り越すこととした。そのほかの予算については、おおむね当初予定通り使用予定である。
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Research Products
(6 results)