2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540448
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
阿部 純義 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70184215)
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Keywords | 量子熱力学 |
Research Abstract |
平成24年度は、1)一般の系の加熱を表現する量子演算の構成とそれによって生成される熱力学的過程におけるClausius不等式の破れ、2)重ね合わせの原理と量子力学的Carnotエンジン効率のエンハンスメント、という2つの問題に、主として取り組んだ。1)に関しては、構成した量子演算は一般的であるが、それを特に反強磁性結合をしているスピン系に対して具体的に適用し、Clausius不等式が破れることを見いだした。破れの強さは、エネルギーの離散性の度合いに比例する形をとるが、より重要な点は、この量子演算は対象系と「隠れた環境系」との間の量子エンタングルメントを引きずっているという事実である。この結果は、量子エンタングルメントを中心とする量子効果が、古典的熱力学の基本法則を変更するという予想を支持するものである。この研究は、下記の文献[1]として出版された。2)については、熱浴なしで可逆的に作動する量子Carnotエンジンに関する研究である。熱浴がないため、系のコヒーレンスは完全に保たれる。本研究では、このコヒーレンスを用いて、状態の重ね合わせを考えることにより、量子Carnotエンジンの効率を上げることが出来ることを見いだした。これは、文献[2]として出版された。 なお、上記の2つが本研究課題に直結するものであるが、その他の研究に関して4編の論文を出版する機会があったことを付記する。 [1] S. Abe and Y. Aoyaghi, Int. J. Mod. Phys. B 26, 1241001 (2012). [2] S. Abe and S. Okuyama, Phys. Rev. E 85, 011104 (2012).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおりに、課題に関する研究を遂行出来ていると感じている。また、2011年度からの当該研究活動により出版された関連論文は他の研究者から既に良く引用され始めていることから、一定の対外的評価も得られていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終の2013年度は、これまでの研究を更に発展させるため、1)量子Carnotエンジンの一般の閉じ込めポテンシャルの場合への拡張とその効率のポテンシャル依存性、2)量子エンタングルメントと熱力学の第2法則との関係、について更に議論を深めていく計画である。1)については、既に前段的な結果を得ることが出来たため、年度の前半までに解決して結果を論文にまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最近のOpen Access Journalブームにより、1編の論文の出版料が10数万円かかることが普通となってきた。このため、次年度研究費55万円(50万円+繰り越し5万円)から、10万円をOpen Access Journalへの論文出版費にあてる。 また、7月1日から5日まで、ブレシア(イタリア)で開催される「第12回 Joint European Thermodynamics Conference」に出席するため、航空運賃29万円、参加費5万円、宿泊費その他11万円の見積もりで、計45万円の旅費が必要となる。
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Research Products
(7 results)