2012 Fiscal Year Research-status Report
量子モンテカルロ-フラグメント分子軌道法による水の第一原理シミュレーション
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23540451
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 成典 神戸大学, その他の研究科, 教授 (10379480)
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Keywords | 水 / 電子状態 / 量子モンテカルロ法 / フラグメント分子軌道法 / 経路積分法 / 積分方程式 / 核量子効果 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
量子モンテカルロ法とフラグメント分子軌道法を組み合わせた水の第一原理シミュレーション手法の開発を目指している。本年度は前年度に引き続き、水分子の電子状態を変分量子モンテカルロ法によって計算するプログラムの開発を進めた。直接的な電子相関効果を記述するJastrow因子に含まれる変分パラメターならびにSlater行列式によるMulti-Configuration展開係数を決定する手法を開発・実装した。後者に関しては、Complete-Graph Tensor Network法を用いることで、変分パラメターの数を10分の1以下に削減した。このようにして、水分子の基底状態エネルギーの正確かつ効率的な評価を行うことができ、その成果を学術雑誌に論文投稿中である(S. Tanaka, Variational Quantum Monte Carlo with Inclusion of Orbital Correlations)。フラグメント分子軌道法に関しては、フラグメント間の多体相関による実効相互作用への遮蔽効果を記述する理論的枠組を開発し、論文発表した(S. Tanaka, C. Watanabe, and Y. Okiyama, Chem. Phys. Lett. 556 (2013) 272)。また、液体状態にある水の分子間相関を積分方程式の手法で記述する新たな定式化を行い、論文発表した(S. Tanaka and M. Nakano, Chem. Phys. Lett., in press)。水の第一原理的なシミュレーション手法の新たな開発と応用計算に向けて、必要となる理論・シミュレーションツールの開発が一歩ずつ着実に進んでいる状況であり、今後はスーパーコンピュータなどの上での大規模並列計算への展開を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水の第一原理シミュレーションを実現するために、(1)水分子の正確な電子状態計算、(2)原子核の量子効果の考慮、(3)水分子間の多体効果の考慮、等が必要である。本年度は、(1)に関しては新規変分量子モンテカルロ法による計算、(3)に関してはフラグメント分子軌道法による実効相互作用の記述と積分方程式の手法による分子間多体相関効果の記述に関して進展があり、また、(2)に関しては経路積分量子モンテカルロ法による成果について論文発表を行った(T. Fujita, S. Tanaka, T. Fujiwara, M. Kusa, Y. Mochizuki, and M. Shiga, Comput. Theor. Chem. 997 (2012) 7)。
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Strategy for Future Research Activity |
量子モンテカルロ計算ならびにフラグメント分子軌道計算の並列化と高速化が引き続き重要な課題である。既に導入したPCクラスタ計算機での、GPGPUの利用も含めた効率的な計算を実現するとともに、地球シミュレータや「京」などの超並列スーパーコンピュータ上での実行も視野に入れてプログラム開発を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際会議での成果報告や、共同研究先のカナダ・ブロック大学との研究打ち合わせ等を計画している。また、本研究課題の最終年度にあたるため、報告書等の作成も計画している。
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