2014 Fiscal Year Research-status Report
密度非一様性のある非定常界面の非線形発展に関する数理的研究
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23540453
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
松岡 千博 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (10270266)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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Keywords | 磁気流体 / 渦層 / 界面運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度からの界面についての研究を磁気流体(MHD)に拡張し、磁場が存在する流体中における渦層の運動の理論的研究を行った。これは超新星爆発残留物(SNR)における異常磁場増幅を記述できるモデルともなっており、界面の研究のMHDバージョンと云える。流体の方程式を磁気流体の方程式に拡張して、SNRの界面を単純な流体界面ではなく、かなり強い電流が流れる“電流渦層”(電流シート+渦シート)とみなすことにより、界面近傍に強い磁場が誘導されることや、ケルビン・ヘルムホルツ不安定性が抑えられることなどががわかってきた。これまでの研究から、磁場に流体不安定性を抑制する効果があることがわかってきたが、これは慣性核融合において非常に重要である。
この年度で、それまでいくつかの点であいまいさのあったモデル方程式および数値計算スキームを完全に確立することができた。これにより、初期磁場を界面に平行にかけると、時間がたって界面が大変形しても、磁場は界面に平行であり続ける理由や、ローレンツ力の効果、純粋な渦層との違い等、既存の流体力学の分野では知られていなかった様々な事柄が明らかになってきた。また、本研究開始時にはDNSによる結果と理論モデルによる結果にかなりの差異が存在したが、現在は定量的に比べても様々なパラメータ領域で非常によい一致を見ており、DNSでは困難ないくつかの数学的な計算を理論モデルが補うことができている。以上の結果はこの年度に上梓された論文および、国際会議を含むいくつかの研究会および学会で口頭発表できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は磁気流体(MHD)における界面運動までモデルの拡張が可能だとは思っていなかったが、その後、様々な実験データや直接数値シミュレーション(DNS)によるMHD中における渦運動に関する研究が立て続けに発表され、これらのデータを持つ研究者たちと交流することにより、渦層モデルの磁気流体への拡張に成功しつつある。これは本研究開始時には全く予期しなかった方向であるが、現在、世界的に活発となってきた分野であり、将来的にはやりたいと考えていた方向に合致する。また、この年度で磁気流体の研究が開始できたことにより、次年度以降の研究にスムーズに移行できることが予測される。このことから、交付申請書に記載した「研究の目的」達成度以上に研究が進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度では主としてMHDリヒトマイヤー・メシュコフ不安定性の理論モデルを構築し、その数値計算を行った。27年度にはこれに重力を入れてMHDレーリー・テーラー不安定性の理論モデルの構築およびその数値計算を行い、可能なら3次元まで拡張したいと考えている。また、26年度中に行った数値計算の膨大なデータが存在するので、これらを論文にまとめる作業も行う予定である。 平成26年度は磁場の増幅機構の解明にのみ焦点を当てていたが、昨年度あたりから、磁場によって流体不安定性を抑制できるならそれが核融合に応用できるのではないかという数値的研究がいくつかの(国外の)研究グループで始まっている。本研究で用いた理論モデルをもとにして27年度では流体の密度比(非一様性の大きさ)や初期条件、重力の大きさ等、具体的なパラメータの値を変えて、何をどうコントロールすればもっとも効果的に流体不安定性を磁場によって抑えられるかを定量的に調べる予定である。
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Causes of Carryover |
前年度に、当初予定していなかった学内競争的資金(学長裁量経費)が当たったのと、これも当初予定していなかった科研費(萌芽研究)の研究分担者になり、こちらは最終年度だったのでその予算執行を優先させたため、平成26年度は比較的資金に余裕ができた。次年度に高額なワークステーション購入を予定していたこともあり、予算をできるだけそちらに回すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として海外出張費、ワークステーションおよびサーバー購入にあてる予定である。
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