2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540459
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
清水 寧 立命館大学, 理工学部, 准教授 (30388128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 研介 立命館大学, 理工学部, 教授 (40151287)
保田 英洋 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 教授 (60210259)
澤田 信一 関西学院大学, 理工学部, 教授 (80253904)
新山 友暁 金沢大学, 理工学研究域機械工学類, 博士研究員 (00583858)
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Keywords | ナノクラスター / 表面再構成構造 / 分子動力学 |
Research Abstract |
本研究の目的はナノクラスターをはじめとする少数多体系の多様な運動を非線形ダイナミクスの観点から統一的に解釈することである。この目的の下で本年度は以下の(1)(2)(3)の成果をあげた。 1,Auクラスター(100)表面の5倍周期をもつ再構成構造のダイナミクス(欠陥の表面運動)を、経験的多体ポテンシャルによる表面スラブモデルを用いて、再現することに成功した。特に安定な表面再構成構造を数値的に枚挙することによって、従来から知られている表面構造に加えて新種の安定構造を見いだした。さらに5倍周期構造が表面上を動くときの反応経路を調べることにより、新種の安定構造が5倍周期構造の拡散的運動において律速となっていることを示す結果を得た。これは直線状の5倍周期構造が、表面上を拡散運動をする際に、あたかもガラガラヘビのような横ばい運動することを示唆する。すなわち新しいタイプの集団的運動がナノクラスター表面でおこっている可能性を示している。 2,ナノクラスターのメソスケールダイナミクスの一例としてアルカリハライド系ナノクラスター(KCl-KBr系)の高速混晶化過程の原子論的機構の解明を行ってきた。混晶化の素過程が空孔拡散であること.クラスターサイズの増大につれて空孔生成エネルギーが変化することが混晶化の高速化において本質的であることを見いだした。この結果は昨年度すでに得ていた部分もあるが、本年度ではそれをさらに高い確度で補強する結果を積み上げた。 3,少数多体系の最も小さな例として、量子細線における2電子系のダイナミクスを広いエネルギー範囲で数値的に調べた。この系が古典系として軌道不安定性という意味でのカオスを含むことの結果として、量子準位の統計的性質に量子カオスの特徴的傾向があることを数値的に示した。多体系の量子カオスの複雑さが実験的に検証が容易なな量子細線の電子の性質に現れる例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主題は実験的に検証できる系を舞台に非線形ダイナミクスを研究することにある。その点で実験家との連携がもっとも間近にあるのは上述の(1)のテーマである。(1)の研究の進度が遅れているという意味で目的達成が遅れているといわざるをえない。遅れの理由は、昨年度報告した通り、Au(100)面での5倍周期再構成構造を準安定構造として再現する経験的ポテンシャルモデルの探索と表面モデルの妥当な原子配置の探索に予想外の多くの時間を要したことによる。本年度にglue modelを用い5倍周期をもつ表面再構造を安定構造として再現することが確認できたことによる研究に大きな進展がみられた。が、当初の遅れをまだ挽回できていない。また実験家から提供された動画データをもとに原子の運動を分析する作業に少し予定より遅れが見られている。これは実験グループとのコミュニケーションの行き違いからデータの共有に時間がかかったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
実験動画データの分析は、ソフトウエアの使用に習熟さえすれば半ば作業に近いものがある。したがってこの作業には人数を割いて進めることで遅れを取り戻す予定である。また実験データの時系列解析は、より研究者間のコミュニケーションを緊密にして効率的に進めたい。 メインテーマであるAu(100)表面再構成構造のダイナミクスの解析についてはスラブモデルのサイズを変えるとともに実験状況との対応がより近くなるようにモデルを洗練させることができるか否かが進展を左右する次の重要なステップとなる。この部分は特に実験家との十分な意見交換が重要と思われる。緊密に連携をとりながら研究を進めたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に予定していた国内出張がキャンセルとなり、同じ目的で次年度に旅費を使用したい。
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Research Products
(2 results)