2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540461
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
田中 秋広 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 主幹研究員 (10354143)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / アクシオン場 / 渦糸 / 対称性に保護されたトポロジカル相 / ハルデーンギャップ相 / 非線形シグマ模型 |
Research Abstract |
1)結晶欠陥やトポロジカル欠陥があるトポロジカル物質相においてベリー位相項由が引き起こす量子効果について調べた。項の係数であるアクシオン場は定数値を取る場合が主に想定されたが、最近ワイル半金属やトポロジカル超伝導体など、アクシオン場が南部-ゴールドストーン(NG)モードとして自由に揺らぐケースが登場し、その効果の解明は重要である。また超流動の位相場と同様、渦糸が重要な役割を果たすと予想される。そこで実際にアクシオン渦糸が生じるような状況を構築した。具体的には二次元整数量子ホール系を層状にスタックした系に螺旋転位を導入したときの有効作用を導いた。転位による空間捩れを反映するために曲がった時空におけディラック粒子の理論を援用した結果、線状欠陥をコアとしたアクシオン渦糸配位が生じ、更に渦糸コア内にフェルミオンのカイラルゼロモードが生じることが示せた。さらに前述のアクシオン渦糸の運動を超流動渦糸と対比して調べた。アクシオン渦糸の場合も運動中に超流動と同様のマグナス力が作用する、コア内ゼロモードの存在により超流動では存在しない特有の力も働くことが判明した。2)トポロジカルに保護されたトポロジカル相(SPT相)の場の理論的な研究を進めた。現在SPTの具体例は一次元量子スピン系のハルデン相のみであるため、それを新たな視点から解析した。ハルデン相は元々ベリー位相項付きの非線形シグマ模型へのマッピングに基づき存在が予想されたことから、我々はこの有効理論で表される系の波動関数の位相幾何学的な性質を詳しく調べた。まず偶数スピンと奇数スピンのスピン鎖との違いが見つかり、SPT相が後者でしか実現しないことをベリー位相項の効果として説明した。非線形シグマ模型へのマッピングを用いた証明の利点は高次元への拡張が容易であることにあり、それを現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
業績概要に記した通り、新しいタイプの凝縮系であるマスレスアクシオン場とその渦糸励起について、物理的な具体例の構築やその応答特性、渦糸の運動について一定の成果が得られた。またSPT相のプロトタイプである一次元量子スピン系についてのトポロジカルな性質を、高次元に拡張が可能な有効場の理論を用いて調べ、新たな知見が得られた。これらの成果が得られた点では概ね順当とも言えるが、これらの課題の共同研究者であったポスドク研究員が年度前半で移籍して年度の早い時期に研究を離れたことや新規のポスドク研究員を採用して新しく参画したことなどから、研究課題として完結させるためにはいま少し細部を詰める必要が感じている。このため本課題を26年度へと延長させていただいている次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
アクシオン場がもともと存在しないような弱いトポロジカル相においてもトポロジカル欠陥由来のアクシオン自由度が創発することが分かったので、このアイデアをBF理論で記述されるような更に広い物質相についても適用する。また上記のようにトポロジカル超伝導体にも適用できることから、アクシオン渦糸のベリー位相効果とマヨラナ準粒子の非可換統計性との関係を示唆されるが、この点についてまとめる必要がある。 更にSPT相の場の理論的な研究については一次元で得られた結果を高次元へと拡張する。なお、高次元化に当たって、非線形シグマ模型の場の成分数が次元とともに増加し、解析が難しくなるが、大域的な性質を見通しよく調べるためにゲージ理論として扱う。3成分のシグマ模型のゲージ理論としての記述は良く知られるが、4元数表示を用いることで、高次元で重要となる5成分シグマ模型をゲージ理論に帰着させることが可能となる。その際、理論のベリー位相項は非可換なインスタントン項やチャーン-サイモンズ項の形を取るので、バルク-エッジ対応をはじめ、良く知られるゲージ理論の手法を適用することが可能となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度から本課題に関連した研究を共同で推進していたポスドク研究員が年度途中で他研究機関へと転出した。この機関は他分野であったため、これまでの研究に専従することは困難となった。これに伴い新規にポスドク研究員を採用して新しく研究体制を構築した。以上の経緯により当該研究は一定の成果は得られたものの完結に至らず、次年度に完結させることが必要となった。 当初25年度に発表予定であった複数の論文を発表する予定であり、その投稿諸経費に使用する。また共同研究者との打ち合わせ(国内)、関連国際会議での発表(海外。当初25年度中に参加予定であった)のための旅費として使用する予定である。
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