2011 Fiscal Year Research-status Report
相境界面の運動に着目した異方性ゲル形成の統計力学の構築とその応用
Project/Area Number |
23540475
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山本 隆夫 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80200814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土橋 敏明 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30155626)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 異方性ゲル / 高分子濃厚溶液 / 潮汐力 / 乾燥 / Moving Boundary描像 / スケーリング則 |
Research Abstract |
(1)高分子鎖を簡単なGauss鎖で記述し、(1)鎖のセグメントは空間的に不均一な化学ポテンシャル中ある、(2)ホワイトノイズ型のランダム力を受ける、(3)慣性よりエネルギー散逸の効果が大きいとしGauss鎖のダイナミックスを時間について一階のランジュバン方程式で記述する、という3つの条件を課して解析した。"潮汐力"、粘性、復元力、熱揺らぎの競合関係の把握はできた。具体的な成果として、(i-1)化学ポテンシャルの空間の二階微分(Qと記述)が潮汐力として働き高分子鎖の配向・変形を引き起こしていることがわかった。(i-2)Q<0では高分子鎖は伸長し条件によっては棒状と見なせるほどまで伸びQ>0ではきわめて急速に一軸方向に圧縮され厚さはセグメント数によらない小さな値に収束する。このことより、高分子鎖の配向・変形挙動は高分子鎖の復元力、粘性ではなく潮汐力に支配されている。が得られた。(2)円形ガラス板で挟んだ濃厚DNA水溶液を一定湿度のもとで乾燥させ異方性ゲルを作製した。溶液の重量の時間変化、異方性ゲル層厚の時間変化を測定し、水の移動ダイナミックスに基づく重量変化の理論、高分子鎖の配向場φのφ-4型自由エネルギーによるゲル層厚の理論を作成し、実験結果と照らし合わせた結果、実験結果をよく説明できることがわかった。(3)ガラス板上に滴下した濃厚DNA水溶液を一定湿度のもとで乾燥させ溶液の重量の時間変化、異方性ゲル層厚の時間変化を測定した結果、いくつかのスケーリング則があることが判明した。(4)正方形ガラス板を用いた異方性ゲル化、一軸方向のみに成長できるようにした場合の異方性ゲル化のゲル層厚のダイナミックスを測定した。カバーガラス形状を一般化したMoving Boundary描像を作製し、一軸方向異方性ゲル化のゲル層厚のダイナミックスについてはよく説明できていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画[1]について:研究実績の概要(1)にあるように、前半部分は予定通り終了した。しかし、その結果は潮汐力のみが支配的という予想外の結果となった。このことより後半部分のシミュレーションについては当初計画が意味をなさなくなり次年度予定の、環境場を具体的に取り入れたシミュレーションを行う必要がある状況となったが、研究としては計画[1]はおおむね完了したと考えられる。計画[2]について:研究実績の概要(1)の潮汐力のみが支配的という結果のため一高分子鎖の高分子鎖の配向場φ表記はできないこという否定的な形での計画の完了となった。しかし、アイデア自身は研究業績の概要(2)にあるように乾燥によるゲル化に活用されている。計画[3]、[4]、[5]については研究業績の概要(3)(4)にあるようにおおむね予定通り、一部は予定以上に進んだ。ただ、正方形ガラス板の場合の理論解析が遅れているので次年度等角写像を用いた解析方法を確立する予定である。以上を総合しておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画[H24-1]:一高分子鎖の場合の高分子鎖の化学ポテンシャルをFlory-Huggins(FH)自由エネルギーで記述し、イオン分布、高分子鎖分布と結びつけ、潮汐力に注目した一高分子鎖のマイクロレオロジーを構築する。高分子鎖の重心の運動から高分子鎖の溶液中での体積分率の時間変化を記述し、一高分子鎖のマイクロレオロジーから高分子鎖の体積分率のダイナミックスを導出する。(山本担当)計画[H24-2]:空間的に不均一な環境場における大きな変形を許すような一分子高分子鎖モンテ・カルロシミュレーションを行う。高分子鎖間の多体効果はFH自由エネルギーで記述される化学ポテンシャルの中に高分子鎖の体積分率を入れることで記述する。これらの結果を[H24-1]の結果とすりあわせる。(山本担当)計画[H24-3]:[H24-1]の結果から高分子鎖の配向場のダイナミックスの導出を試みる。さらに、ネマティック相互作用を含んだ形に一般化し、乾燥の場合のような超濃厚高分子鎖のダイナミックスを記述できるようにする。こうして導出したダイナミックスを境界面のダイナミックスに書き直し、Moving-Boundary(MB)描像を拡張し、界面カイネティックスを含む拡張されたMB描像を完成する。(山本担当)計画[H24-4]:透析および乾燥法による異方性ゲル化を、高分子鎖、透析内・外液カバーガラス形状をかえておこない、[H24-1]~[H24-3]に必要な情報を得る。特に、水素結合型、架橋型、乾燥型、スピノーダル分解型の異方性ゲル形成の違いについて注目した実験を行う。(土橋担当)計画[H24-5]:正方形カバーガラスによる異方性ゲル形成のMB描像のダイナミックスを,等角写像を用いて解析することで、MB描像のもつ対称性について調べる。(山本担当)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
モンテカルロシミュレーションのデーター解析のための計算機、パーツおよびソフトウェア、実験を行うためのガラス器具、試薬、それに成果発表等の旅費等に使用する予定である。
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Research Products
(10 results)