2012 Fiscal Year Research-status Report
相境界面の運動に着目した異方性ゲル形成の統計力学の構築とその応用
Project/Area Number |
23540475
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山本 隆夫 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80200814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土橋 敏明 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30155626)
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Keywords | 異方性ゲル / 熱力学的不安定性 / ゲルー異方性ゲル転移 / 潮汐力 / Moving Boundary描像 |
Research Abstract |
(1)ゲルーゾル相境界の高分子鎖のダイナミックスを高分子鎖セグメントの化学ポテンシャルが空間分布することで現れる高分子鎖の重心の駆動力および潮汐力で一般的に記述する方法を考案した。潮汐力による高分子鎖の変形については慣性半径の異方性により記述する方法を考案した。高分子セグメントの化学ポテンシャルを、Flory-Hugginsの自由エネルギーのような特定な自由エネルギーではなく溶媒成分構成および高分子濃度の関数とした一般的な自由エネルギーから記述することで、高分子濃度の効果を取り入れた相境界の高分子鎖のダイナミックスを構築できた。それから導かれる結論として、高分子鎖の凝縮挙動および伸長挙動は高分子溶液の熱力学的不安定性に起因することがわかった。このとき、架橋イオンは高分子鎖の配向に直接的に作用する効果よりも高分子溶液の熱力学的不安定化(高分子鎖の不溶化)を引き起こす因子としての効果が高いことがわかった。 (2)(1)の熱力学的不安定化の効果を、紐状の高分子よりシミュレーションが容易な配向した多層膜系のシステムについてモンテ・カルロシミュレーションを行い、膜の形状に大きな効果を及ぼすことが確認できた。 (3)カラギーナン溶液から作製した物理ゲルが非溶媒である塩化カリュウム溶液に浸漬することで異方性ゲルになることを発見した。また、この異方性ゲル化のダイナミックスを測定し、このダイナミックスが高分子濃度に依存しないことから、異方性ゲル化がカラギーナン分子の状態変化に起因するものであることを突き止めた。この実験により、非溶媒により引き起こされる高分子溶液(この場合はゲル)の熱力学的不安定性が高分子鎖の配向に大きく寄与していることがわかった。 (4)一軸性の異方性ゲル化において、溶液封入部分の形状と異方性ゲル化ダイナミックスの間の関係を導き、これに基づくダイナミックスの制御方法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
○交付申請書目的1について:業績概要(1)、(2)、(3)より、界面カイネティクスおよび境界面の高分子鎖の動きについて、高分子溶液の熱力学的不安定性にもとづく微視的描像を得ることができた。ただし、当初予定していたモンテ・カルロシミュレーションのアルゴリズムでは熱力学的不安定性については記述できない。業績概要(2)で作製したプログラムを高分子鎖系に拡張したシミュレーションが必要となる。25年度にシミュレーションを行い最終的な描像を確立させる。 ○交付申請書目的2について:流入拡散場、流出拡散場双方を考慮した拡張されたMB描像については対称性のよい場合に限るか一般化でき、業績概要(4)に述べたように異方性ゲル化のダイナミックスの制御方法まで提案可能となった。目的2は達成できたといってよい。 ○交付申請書目的3について:乾燥による異方性ゲル化、業績概要(3)で述べたゲルー異方性ゲル転移の発見及び高分子溶液の熱力学的不安定性に基づく異方性ゲル化描像より、熱力学的不安定領域の移動に着目することで統合MB描像の構築の指針が定まった。25年度に完成させる予定である。 ○交付申請目的4について:業績概要(3)で述べたゲルから異方性ゲルを作製する方法、業績概要(4)で述べた高分子溶液だめの構造により異方性ゲル化ダイナミックスを制御する方法などいくつかの提案をすることができた。目的4はほぼ達成できたといってよい。 以上より、シミュレーションについてはプログラム作成指針が実験データの蓄積により変わったため遅れているが、これは新しい発見に伴う方針の変更による当然の遅れである。また、目的2、4がほぼ達成できたことからしておおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画[H25-1]:業績概要(2)のシミュレーションを拡張し、熱力学的不安定性をおこす溶液における高分子鎖のダイナミックスのモンテカルロシミュレーションをおこなう。高分子の重心の運動および、慣性半径の異方性に着目してデータを収集する。(山本担当) 計画[H25-2]:異方性ゲルーゾル境界面における高分子鎖のダイナミックスの特徴を解析計算から導き、計画[H25-1]のシミュレーションと比較して理論を洗練させる。(山本担当) 計画[H25-3]:熱力学的不安定領域の移動に着目することで、高分子溶液の乾燥過程で主要因となる境界面カイネティクスと熱力学的不安定を引き起こすイオン流入・流出によるMB描像を統合し統合MB描像の構築をおこなう。(山本担当) 計画[H25-4]:カードラン、ゼラチン、カラギーナン、DNA等の異方性ゲル化実験をカバーガラスの形状、浸漬溶液の種類等を変えておこなうことで、計画[25-4]に必要なデータを収集する。(土橋担当) 計画[H25-5]:新しく提案された異方性ゲルの作製方法、形成ダイナミックスの制御方法をいろいろな高分子溶液に用いて異方性ゲルを実際に作製するとともに新しい異方性ゲル作製方法を考案する。(山本、土橋担当)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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