2011 Fiscal Year Research-status Report
X線および中性子結晶構造解析による生体分子の水和水の揺らぎの解析
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23540478
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
菅原 洋子 北里大学, 理学部, 教授 (10167455)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生物物理 / 核酸 / 蛋白質 / 水和 |
Research Abstract |
生体分子の機能発現には、揺らぎをもった水和水の存在が不可欠であることが指摘されている。本課題では、含水量の変化が構造転移を誘起する蛋白質結晶、オリゴヌクレオチド結晶に注目し、水和構造の揺らぎを解析するとともに、これが生体分子の構造と運動性にどのような効果をもたらしているのかを明らかにすることを目指している。 平成23年度においては、含水量に依存した結晶構造転移が誘起されることを既に見出していた2種の蛋白質結晶(斜方晶キシロースイソメラーゼおよび正方晶タウマチン)について、転移に伴う蛋白質分子の構造および分子間相互作用の変化についての解析を行い、その特性を明らかにした。また、ウマ心筋由来シトクロムc三方晶を得て、水和水の減少に伴う相転移現象が誘起されることを新たに確認するとともに、X線結晶構造解析により相転移前後の構造を決定し、変化の概要を明らかにした。オリゴヌクレオチド水和物の含水量に依存した構造転移の解析に関しては、デオキシシチジリル-(3'-5')-デオキシグアノシン(d(CpG))のアンモニウム塩についてX線回折法により相対湿度に依存した相転移の解析を行い、相対湿度に依存して3水和物-1水和物間の可逆的転移が誘起されること、およびこの転移はリボースのコンフォメーション変化を伴っていることを明らかにした。これと並行して、中性子構造解析に向けて一辺1mm程度の結晶を得る条件をタウマチン、ウマ心筋由来シトクロムc、d(CpG)(NH4)について確立した。今後、この条件を用いて数mm角の結晶を作成することを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた2種の蛋白質結晶(斜方晶キシロースイソメラーゼ、正方晶タウマチン)およびジヌクレオチド結晶(d(CpG)(NH4))について、含水量の増減と相関した構造転移の特性を明らかにすることが出来た。また、新たに1種の蛋白質結晶(ウマ心筋由来シトクロムc)について相転移が誘起されることを見いだした。一方、斜方晶キシロースイソメラーゼについては2mm、正方晶タウマチン、チトクロムcおよびd(CpG)(NH4)については1mm程度の大きさの結晶を得る条件を既に確立できており、中性子構造解析に向けた数mm角の結晶を得る結晶化条件の探索も順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
含水量の増減と相関した構造転移の誘起される蛋白質結晶(斜方晶キシロースイソメラーゼ、正方晶タウマチン)については、相転移を誘起する温度および湿度条件を検討することにより相転移に伴う結晶性の低下を減少させ、高分解能のX線回折データを得て構造精密化を行い、相転移前後の水和水状態、および水和水の揺らぎの変化を明らかにすることを予定している。オリゴヌクレオチドについては、十量体および十二量体の結晶化を行い、含水量を制御して、含水量に依存した相転移の有無の解析を進める。一方、前年度に引き続き、同様な現象を起こす蛋白質結晶の探索を進め、普遍的な特性を明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費では、主要備品として結晶化条件探索実験における結晶観察用CCDカメラの購入を予定している。また、平成24年度より高輝度迅速蛋白質構造解析システムの利用が可能となり、蛋白質結晶についての含水量変化に依存した相転移の解析のためのX線回折データ測定について研究効率の著しい向上が期待出来ることから、平成23年度の研究費の一部(30万円弱)を次年度使用額として繰り越しており、平成24年度において試薬代として使用することを予定している。
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