2012 Fiscal Year Research-status Report
X線および中性子結晶構造解析による生体分子の水和水の揺らぎの解析
Project/Area Number |
23540478
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
菅原 洋子 北里大学, 理学部, 教授 (10167455)
|
Keywords | 生物物理 / 核酸 / 蛋白質 / 水和 |
Research Abstract |
生体分子の機能発現には、揺らぎをもった水和水の存在が不可欠であることが指摘されている。本課題では、含水量の変化が構造転移を誘起する蛋白質結晶、オリゴヌクレオチド結晶に注目し、水和構造の揺らぎを解析するとともに、これが生体分子の構造と揺らぎにどのような効果をもたらしているのかを明らかにすることを目指している。 平成24年度においては、第一に、含水量に依存した結晶構造転移が誘起される正方晶タウマチンについて、低湿度で安定な相についてX線結晶構造解析により構造精密化を行い、含水量の低下により引き起こされる転移に伴う水和水分布の変化を明らかにした。X線結晶構造解析により位置が決まる水和水数は高湿度相の方が多いが、蛋白質を架橋する形で分子間相互作用に直接かかわる水和水の数は低湿度型においてむしろ増加する、即ち揺らぎが減少することが示された。また、同じく含水量に依存した構造転移がおこるウマ心筋由来シトクロムcの三方晶の結晶について、新たな転移を見いだし、相転移後の構造を決定した。今後、水和構造という観点から、既知の構造転移との差異の解析を進めていく。第二に、正方晶シトクロムcについて、J-PARC/MLF(BL-03,iBIX)において中性子回折強度データの収集を行った。中性子結晶構造解析により、機能発現部位であるヘム近傍における水素結合および水和状態の詳細を明らかにしていく事を予定している。第三に、ヌクレオチド化合物のうち、高湿度型と低湿度型の可逆的な構造転移がいくつかの中間相を経て進行するグアノシン5’-一リン酸七水和物について、中間相の構造決定に成功した。段階的転移と水和構造との相関を考察する上での貴重な情報を得ることが出来た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
含水量に依存した相転移がおこる蛋白質結晶の低湿度型の構造精密化に成功し、構造転移に伴う水和状態を変化を明らかに出来たこと、シトクロムcについて、中性子回折強度データを得たことなど、本研究課題の目的とする生体分子の水和水の挙動の解析へ向けた計画が順調に進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度において得た中性子回折強度データを用いて構造解析を進め、水素位置を明らかにすることにより蛋白質の水和状態についての知見を深めること、水和水の揺らぎの温度依存性の解析を行い、水和水のネットワークの揺らぎが含水量および温度に依存してどの様に収束していくかを明らかにすることを予定している。また、平成25年度は最終年度にあたるので、これまでの知見と総合し、非弾性散乱、広帯域誘電分光などからの情報も取り入れ生体分子の水和水の揺らぎの特性を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度は最終年度にあたる。研究費は結晶化に必要な試薬および器機に使用することを予定している。なお、繰越が90,674円あるが、これは顕微鏡用CCDカメが当初の予定より安価に入手できたためで、次年度試薬代として活用することを予定している。
|