2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540489
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩原 肇 東京大学, 地震研究所, 准教授 (60211950)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 観測手法 / 海底地震計 / 傾斜観測 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまでに実用化されていない海底での傾斜変動観測を、学術的成果が得られるよう面的に実現可能とさせる基礎技術の開発にある。既に開発の第一段階を完了させた最新の次世代型広帯域海底地震計(BBOBS-NX)をその開発での基盤技術とし、実証的試験観測を本研究で行うことにより、その観測手法の妥当性を検証し、実用化の道を見いだすことを狙う。 本年度は、まず、地震研究所が所有するBBOBS-NXの1台を利用して、傾斜変動観測を可能にするために以下の改造を行うことで、広帯域地震観測の機能はそのままにし、水平動2成分のマスポジション信号をレコーダーで記録可能なシステム(BBOBST)を作成した。BBOBS-NXで使用しているセンサーを用いての陸上試験は、既に実施しており、本研究で狙う方式での傾斜変動観測が基本的には実行可能であることを確認済みである。マスポジション信号から推測した地球潮汐の振幅の絶対値も、モデル計算から予想される値のオーダーに合っている。このシステムで使用するセンサーが繊細であり機械的な安定が得られるまでには数ヶ月程度以上かかるため、陸上試験観測では長期のデータ比較は行えなかった。 昨年度中に応募し採択された、海洋研究開発機構の深海調査研究公募での無人潜水艇による潜航作業の2航海で、紀伊半島南東沖の南海トラフにおいて昨年7月にBBOBSTを無事設置し、半年程度の観測期間を確保した後に、今年1月回収した。しかし、BBOBSTを揚収後に調べると、センサー部を構成する3つの耐圧容器のうち1つが浸水していた。これらには広帯域地震センサー3成分の各1成分が組み込まれており、それらの間をディージーチェーン接続している。よって、この浸水によりセンサー部は観測開始から全く動作しなかったため、データ記録部は無事に動作していたが意味のあるデータは全く得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「研究実績の概要」に記した通り、今年度に予定した実海域での試験観測データが得られなかったため、次の段階へ移ることができなくなった。この点に対する対応策は「今後の研究の推進方策 等」に示す。 無人潜水艇を利用した設置・回収での作業内容からは、このBBOBSTシステムは海底面に理想的な状態で展開し、容易に回収できることが確認できた。同様な構造のBBOBS-NXはすでに5回の設置経験があるが、海底堆積物の状態の違いはあるにせよ、最も水平が保たれた状態でセンサー部は自由落下設置で堆積物中に埋設されていた。 浸水が起きた耐圧容器については、上陸後に実験室で詳細な調査を行った結果、2個取り付けた水中コネクタの1個が浸水経路で、最も内側にあるO-ringが容器内部側に押し出されていた。同じコネクタはここ10年以上多数の海底観測機器で使用実績があるので、非常に稀な事故だったと考えられる。このコネクタ自体は更なる検証のため製造会社に返送した。この検証結果待ちではあるが、本研究で開発したBBOBSTシステム自体には問題無いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の試験観測で傾斜データを取得できなかったため、H24年度中に再度試験観測を実施することにする。BBOBS-NXを自己浮上方式へ高度化するための試験観測を実施する目的で、海洋研究開発機構の深海調査研究公募により無人潜水艇を2度(11月および2月)利用する機会を既に確保してあったので、BBOBS-NXとほぼ同一の構造であるBBOBSTを利用する予定である。すなわち、当初計画より1年遅れで観測データを得ることになる。観測海域は四国海盆の南西端となるため、地球潮汐以外の地学的要因で傾斜変動があることは期待されないが、安定したデータが取得できることが確認できれば、この試験観測には充分である。 H24年度末のデータ回収後から次の観測までの間に、データを評価しBBOBSTの改修を進め、H25年度からの1年間の長期試験観測に備える。その観測を実施するため、深海調査研究公募へ応募し、無人潜水艇の利用機会を確保する。その際の観測予定海域は房総半島東側で、スロースリップが繰り返し発生しているのが捉えられるだけの性能が得られているかを実地検証する。 上記の公募時には本システムでの観測結果が無いことからこの課題に対する評価が低くある可能性もある。そのため、H25年度の航海が採択されず本観測の機会が得られなかった場合には、翌年に再度応募し、最終年度のH26年度に設置を行うことにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の試験観測で機器に障害が起き必要なデータを取得できなかったため、H24年度中に再度試験観測を実施する。そのために、当初予定に対して、観測旅費および消耗品費が必要となった。
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Research Products
(2 results)