2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540489
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩原 肇 東京大学, 地震研究所, 准教授 (60211950)
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Keywords | 観測手法 / 海底地震計 / 傾斜観測 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまでに実用化されていない海底での傾斜変動観測を、学術的成果が得られるよう面的に実現可能とさせる基礎技術の開発にある。既に開発の第一段階を完了させた最新の次世代型広帯域海底地震計(BBOBS-NX)をその開発での基盤技術とし、実証的試験観測を本研究で行うことにより、その観測手法の妥当性を検証し、実用化への道を見いだすことを狙う。 本年度は、昨年度の試験観測でデータが得られなかった原因への対応を済ませたBBOBSTシステムを用いて、別途進めているBBOBS-NXの機能高度化を目指すための試験観測の機会を使い、それと並行しての機能確認試験を実施した。昨年度中に確保した、海洋研究開発機構の深海調査研究公募での無人潜水艇による潜航作業の2航海で、四国海盆南西端において2012年11月にBBOBST(-NX)を無事設置し、2013年2月に回収した。 本試験観測で得たデータの予備的解析から、地球潮汐に対応すると思われる半日・一日周長の変動は容易に見出すことができている。但し、今回の観測期間は約2ヶ月間と短い為に広帯域地震センサーが充分に安定せず、傾斜変動がうまく得られるのかを判断するのは困難であった。なお、陸上傾斜観測のデータも入手し、海底での傾斜観測データと共に、海洋潮汐荷重を考慮した地球潮汐モデルからの理論値を比較したが、日周長程度の期間では理論値と観測値が全く合わないことが確認された。 また、本格的な長期試験観測を定期的にスロースリップイベントが発生する房総半島東岸で実施する為、海洋研究開発機構の深海調査研究公募へ応募し、2013年4月に無人潜水艇による潜航作業を実施する機会を確保した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実海域での試験観測データが得られなかったことによるH23年度での遅れは、今年度の試験観測が無事に終了したことで取り戻すことができ、当初計画の予定に近い研究段階へ進めることができた。 BBOBSTシステムと同じ構造のBBOBS-NXでの複数回の観測事例を通した、無人潜水艇を利用した設置・回収での作業内容からは、このBBOBSTシステムは海底面に理想的な状態で展開し、容易に回収できることが確認できている。本研究での核となる、広帯域地震センサーのマスポジション信号(加速度信号)を使った傾斜データの取得も問題無く行われている。但し、本来ならば半年以上の長期間連続観測を行うことでセンサーが機械的に充分安定した状態でのデータ取得が理想的であるので、この点ではまだ充分に評価できるデータを得ることができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度(2013年4月)に長期試験観測を開始する機会が確保されているので、これを無事に完了させると共に、約1年後のH26年度内にそのBBOBSTシステムを回収するための機会を海洋研究開発機構の深海調査研究公募へ応募して確保する。この長期観測を通じて、これまでに経験のない水深1400m程度の浅い海域である房総半島東岸で、スロースリップに伴う傾斜変動を捉えられるだけの基本的性能が得られているかを実地検証する。 今年度の試験観測で得たデータについて、同時に設置した流向流速データも利用した解析を進め、その暫定的成果を国内外の学会で成果発表する。最終年度には長期観測データが得られるので、本来の研究目的をこの観測手法で達成できるのかを綿密に検証し、成果を取り纏め学会誌などで発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度初頭に長期試験観測を実施するため、観測旅費などが必要である。その他、これまでの試験観測の結果などを学会などで発表するための成果報告旅費に本研究費を充てる。
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Research Products
(3 results)